■炎上案件も投稿する「ツイート代行bot」の世界

さけのみさん
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 EXIT兼近大樹は、ツイート代行botの存在に「承認欲求が歪み始めている」と驚く。「自分の中にあるものを表現するから、みんなが承認してくれる。誰かが言ったことをやったのでは、承認欲求は得られない。また別の言葉が生まれそうだ」。

 ツイート代行botでは、投稿してほしいとの依頼を受け、厳選して代理で投稿している。関連する7つのアカウントを、7人の管理者で運用していて、全員が10代(中学生~大学生)だ。各アカウントで内容を分け、「ツイート代行bot」は、ウケるかどうか自信のない投稿や、炎上しそうな投稿を対象としている。その他に、陰口代行、イラスト代行、飯テロ代行、ネタツイ代行、好きな曲代行、懺悔代行のバリエーションもある。

 「ツイート代行bot」は2024年8月、管理者の1人により誕生した。高校3年生で18歳の「さけのみ」さんは、Xのタイムラインで存在を知り、フォロワーの多いアカウントを持つことへの憧れから、DMで管理者を志願した。また、大学生の「さんくしょん」さんは、過去、実際に代行を依頼したことがある。さけのみさんからの紹介で、どんな投稿がバズるのか知りたい好奇心から、管理者に加わった。

 「ツイート代行」をやるメリット・目的として、さけのみさんは「承認欲求」「バズりたい欲」が一番で、フォロワー数万のアカウントを持つという自信も挙げる。さんくしょんは、代わりにバズらせ、多くの人に見てもらい、依頼者の思いを実現したいとの思いを語る。実際に助けになって感謝のDMをもらうこともあるそうだ。

 しかし、過去には「ツイート代行」でリスクもあった。回転寿司チェーン店のしょうゆさしをなめる迷惑動画を代行して拡散し炎上。企業側から法的措置を取るとのDMが届いた。X側からもルール違反があったとして、2024年末にアカウントが凍結(4万フォロワー)。現在はアカウントを変え、ツイート代行を継続している。

 志願したきっかけについて、さけのみさんは「bot運営に興味があり、おすすめで“ツイート代行bot”が流れてきて、管理人を志願した」、さんくしょんさんは「代行を依頼したことがあり、さけのみさんに『入りたい』と志願した」と振り返る。

 さけのみさんによると、依頼は「小さいアカウントでは伸びないため、影響力あるアカウントで投稿してほしい」などがあるが、「現在は料金を全くもらっていない」という。

 どういう時に承認欲求が満たされるのか。さんくしょんさんは、「自分のアカウントのフォロワーが少ないと、インプレッション数が伸びないが、大きいアカウントに代行してもらってバズれば、間接的に承認欲求が満たされる」と語る。

 またツイート代行botが話題になることで、「代行botの界隈自体が広がっている。あるゲームに特化したアカウントのように、細かな代行botが増えていて、効果を感じている」という。

 実際に投稿する依頼は「不謹慎は避けつつ、バズりそうなものを選んでいる」と、さけのみさんは説明する。

 運営者の話を聞いて、兼近は「芸能人の炎上にコメントする、顔出しなしのアカウントの気持ちと一緒ではないか。誰かもわからないが、それっぽい正論を言って、いいねをもらうことで、承認されている気持ちになれる。だから、ワケわかんないコメントが多いと納得した」と述べた。

■匿名でも満たされる承認欲求「botが自我を出すなと言われる」
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