■生産者の疑問に農水省「花農家に米や芋を作れと強制するものではない」

懸念の声に農水省は
拡大する

 農水省としては、この法律をどのレベルを対象とするのか。たとえば昨年、宮城県沖で発生した地震の影響で米の流通が滞ったとして「令和の米不足」と騒ぎになったが、これは米そのもの生産量が大きく減少したわけではないので「対象外」。また、2022年にはウクライナ侵攻により、世界全体で小麦の価格が上昇したが、これも日本への供給量は維持されていたとして「対象外」。1993年、記録的な冷夏と長雨で米が大凶作(2割以上減)となった「平生の米騒動」については、「食料供給困難事態」に該当する可能性があるというのが、農水省の見解だ。また、生産者・消費者から出ている懸念の声に対し、番組は農水省に取材したところ「花農家に米や芋を作れと強制するものではない」「難しければ生産しないという計画でも構わない」「国民全体が困っている状態になれば、農家・輸入業者・卸売業者もご協力いただきたい」などと回答した。

 環境副大臣・元デジタル副大臣の自民党・小林史明衆議院議員は「この法律だけでは全然役に立たない」と話す。「(食料が)足りなくなったから北海道でドーンと作ってくれと言った時に、ある時は北海道から九州に運べるかもしれないが、別の有事の時には北海道で作ったって九州に運べないかもしれない。そうすると、九州のエリアの中でどのくらい用意できるのか、四国ではどれくらい用意できるのかというのがある。それをどう運ぶのかを詰めていかないといけない」と、作るだけでなく輸送も含めた検討が必要だとした。「地域の今の生産基盤で自給できないことが明確になると、どれくらい普段から自給しなきゃいけないのかも明らかになってくる。それを並行して進めるという話になる。ここで罰則が20万円とか、20万円じゃないとかいう議論よりも、もっと実は厳しい有事を想定して、次の議論に入って行かないと、日本の農業の話は進まない」。

 また近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「実は、日本はこういう有事法制がすごく遅れている」と述べ、「これはもともと敗戦国というのもあったので有事をあまり想定しないというのもある。ただオイルショックの時に、エネルギーに関してはそういう法制ができて、備蓄などをやっている」と事例を出した。また「食料のほうはほとんど何もなかった状態だ。おそらく、本当に日本の周りは危ない国際情勢でもあるので、こういうものを整備しておかないといけないという問題意識から出てきたものだと思う。何しろ有事になった時に、どう政府自身を運用するのかもあまり決められていないところもある。今いろいろなものを整備していく過程の段階だと思ったほうがいいんじゃないか」とも述べていた。
(『ABEMA Prime』より)
 

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