■アメリカはもう世界を守らない?
作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「基本的にはアメリカが決めることだ」としつつ、「USAIDは長年、無償援助をしてきた。日本のODA(政府開発援助)は、ほぼ借款で、貸しているだけだ。それが一夜にしてなくなるなら、相当インパクトは大きい」と語る。
一方で、「トランプ氏は、『アメリカは世界の警察ではなく、他国の戦争に協力するつもりもない』と言っている。東太平洋から大西洋、南北アメリカ大陸だけを守れば良いという発想で、それを国民が支持している。腹が立つ部分はあるが、いかにアメリカ以外の国で、途上国援助を維持するか考える局面になる」と予想する。
政治学者の岩田温氏は、「アメリカが世界中に、お金をばらまいてきたのは、貧困国が共産主義勢力に飲み込まれてしまわないためだ。東西冷戦の世界的構造では、自由主義陣営に入れて、経済発展をさせた方がいいとの判断だった」と振り返る。
しかしながら、ソ連が崩壊して「アメリカは超大国ではあるが、世界に金をばらまけるほど豊かじゃなくなった」との認識が広がったとして、「トランプ政権を支える白人層の多くは貧困層で、『なぜ他国を支援して、国内のことをやらないのか』と思う。大国としての責務はあるが、アメリカ人には『そんなつもりで税金を払ったんじゃない』という気持ちがある。やり方は強引だが、アメリカ人がこれを支持して、トランプ政権が誕生した事実は受け止めるべきだ」と話す。
調査報道とファクトチェックを行う独立系メディア「InFact(インファクト)」編集長の立岩陽一郎氏は、「言葉に気をつけながらだが、『うまいところに目を付けたな』と感じる」と語る。「トランプ氏が主張する“ディープステート”につながるような、ワシントンDCがアメリカを恐ろしい方向に導いているというストーリーが見える。とはいえ、国民から強い反発が出るかというと、さほどないのかなという気がする」。
佐々木氏は、USAIDの援助が「あらゆる分野にわたっている」点に着目し、「よく怪しまれるLGBTQだけでなく、まっとうな人道支援もある。その全てを『怪しい支援だ』『ネガティブな効果を出す』とするのは、非常にまずい。事業仕分けをするにしても、『USAIDはインチキ臭いことしかしない』という誘導はすべきでない」と主張した。
(『ABEMA Prime』より)


