品川区は今年10月から区立学校給食のすべての野菜を有機農産物や特別栽培農産物にするため、予算およそ2800万円を計上することを明らかにした。
しかし、区民からは「エビデンスがないにもかかわらず自治体が税金を使って導入する。やはり区民として納得できない」などの声が上がっている。
問題となったのは、有機農産物などを導入する根拠だ。
「学校給食については、昨年実施した中学生とのタウンミーティングで『美味しい給食が食べたい』との意見をいただいた。これを踏まえ、給食食材の全ての野菜について有機農産物・特別栽培農産物を都内で初めて導入し、より安全安心な学校給食を実現し、児童生徒の健康を増進していく」(品川区 森澤恭子区長)
区長の発言のような健康を増進させる効果はあるのかなどについて疑問の声が上がった。
有機農産物とは、化学合成された肥料や農薬を使わず、遺伝子組み換え技術を利用しないなどの条件を満たした農産物のことだ。
農水省は安全性や健康への影響・味について、慣行の農産物と比べて「有意差があるという根拠は当省では持っていない」「科学的知見がそろっていない」としている。
有機農産物等が「より安全」で「健康を増進する」というエビデンスはあるのか、品川区に問い合わせたところ、「農林水産省においても学校給食での有機農産物等の推進についてキャンペーンを行っているが、SDGs未来都市に選定された品川区として、子どもたちに地球環境にやさしい食材を利用することとした」と回答があり、健康増進などの根拠については触れられていない。
「子どもたちに、『なぜオーガニックなの?』と聞かれたときに大人は何と説明するのか? 私はものすごく嫌な気持ちになる」(品川区民)
区は“オール有機野菜”の導入について「全区民アンケート等の意見・要望を踏まえた」としている。
「子どもの体は食からきている。すでにオーガニック給食を始めている学校があるのに、品川区は遅れている」「保育園や学校給食の食材をオーガニックにしてほしい。数少ない子どもたちの健康を守っていきたい」などのオーガニック給食の導入を求める声がアンケートの自由記述欄に記載されていたという。
「森澤区長のエビデンスというのがあの会見を見るかぎり、区民アンケートの結果だったりとか。それは科学的根拠とは全く別のデータで。(区政全体に望むことは?)リテラシーを上げてほしい」(品川区民)
現在、区民が発起人になり、給食の食材が有機かどうかにこだわるのではなく、同じ予算で品数や量を充実させるよう求めるなどの署名活動も行われている。
農水省は、有機農産物等が食の安全や健康と関連するかの情報について科学的知見が不十分としながらも、現時点では省の公式サイトなどへの掲載は考えていないという。
(『ABEMAヒルズ』より)


