公選法は参入障壁?
安野氏も指摘した“品位”とは何かについて、25日の委員会に出席した総務省選挙部長は「いかなるものが品位を損なうかは候補者や有権者によっても様々なので、選挙管理委員会は判断できない」と回答している。議案の提出者である鈴木英敬(自民)氏は、「品位保持規定の主旨は、品位を損なう記載をしないよう候補者の自覚を促すこと」「行政処分や刑事罰が科されたりする制度とはしていない」「規定に反したポスターを掲示したこと自体が有権者の投票の判断材料になる」と説明した。
あいまいな規定が多い公職選挙法で、安野氏が実際に困った点については「まず、都知事選に出るとなったら公職選挙法を調べる。逮捕されたくないので、そこはしっかり調べるわけだが、例えば、街頭演説を聞いてくれた方が、私が過去に出版した本を持ってきて『応援しています。サインください』とおっしゃった時に、サインをしていいのかというのも非常にセンシティブ。サインしてしまうと、その本はメルカリで売ったら普通よりちょっと値段が上がっちゃう。これは買収に当たるんじゃないか、みたいな細かい話がたくさんある」と振り返った。
安野氏はこのような複雑な公選法の存在について「ある種、参入障壁になっている。政治の外にいた私みたいな人間が『選挙をやろう』となった時には難しさが生じるが、慣れている方は色々知っているから活動できる。弁護士の先生に聞いても、選挙管理委員会に聞いてもわからないこともあった。私としてはもうちょっとシンプルにした方がいいと思う。特に『商品の広告や営業に関する宣伝』に実際に罰金が入ってくると、すごく保守的な、安全側に傾けた判断をせざるを得ない」と懸念を示した。
さらに今後のリスクとして「例えば、すごく強権的な政権が誕生した時に、自分の敵勢力に『これは営業に当たるぞ』とか『これは名誉を傷つけているじゃないか』などとして運用される可能性もある。そうした点を考えると、このグレーゾーンが多すぎる公職選挙は整理していった方がいい」と指摘した。
「引き続き検討」となった「インターネット上の誹謗中傷問題」について安野氏は「人類もSNSを使い始めてから10年とか20年しか経っておらず、まだまだ成熟していない。ここは非常に議論を重ねていく必要がある。もう一つ重要なのは、どんどんSNSの世界も変わっていく。それに対してちゃんと制度を作る側も追いついていかないといけない」と指摘。
では、もし公職選挙法を変えるとなれば、どこから手をつけるべきなのだろうか?
安野氏は「公職選挙の中で『選挙活動』と『政治活動』は明確に切り離している。選挙期間中しか選挙活動してはいけない。そうではない時に政治活動をすると分かれているが、実は政治活動と選挙活動の間は非常にグレーゾーンがたくさんある。このことがいろいろな複雑さや新人候補がなかなか勝ちにくい状況などを生んでいるので、まずこの区別をやめるのがいい」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)


