枠組みは「ネットゼロ・バンキング・アライアンス」で2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指し金融機関が参加。日本からはメガバンクや野村ホールディングスなど6つの金融機関が加盟していた。
一方、アメリカの大手金融機関、ゴールドマンサックスやJPモルガン・チェースなどが離脱を表明していた。
三井住友フィナンシャルグループの脱退について、社会起業家の牧浦土雅氏は「規定路線ではあった」と述べた。
「JPモルガンやモルガンスタンレーが抜けた時点で、日本のメガバンク金融機関も脱退することは見えていたがその“理由”が違っている。アメリカのゴールドンマンサックスとかJPモルガンは、基本的には脱炭素という考え方で石油とか化石燃料、ガス系の会社への投融資からは撤退、もしくは額を減らしていく。脱炭素の気候変動の流れに則って提言していたものの、その裏にはやはり政治との深い関わりがある。例えば、共和党が強いテキサス州とかウェストバージニア州は、昔から製造業とか石油系の会社が強かった。そういう会社に対して、投融資を引き揚げるところは、儲かっているのに引き揚げることになるので『株主価値の最大化』とは違った方向に行っていると裁判マターにもなっているくらいだ。一方で、日本の金融機関にはそこまでの“強い風”はまだ吹いていない。そして事実、三井住友フィナンシャルグループはネットゼロ・バンキング・アライアンスからは一旦脱退するが、サステナブルや脱炭素への取り組みは続ける。自主的にやっていくことは公言しているので、そこのファンデメンタルの違いはある」
アメリカはトランプ政権になって気候変動に対しての考え方が変わったのだろうか?
牧浦氏は「もうすでに変わっている。やはりEUが気候変動をリードしているといっても一番大きな影響力を持ってるのはアメリカの機関投資家や金融機関、保険会社なので、やはりアメリカの企業体がどう動くのかが世界を変えている。やはり気候変動において重要なのは、仮に撤退などしたところで、一気に二酸化炭素の排出が減るわけでも地球温暖化が減速するわけでもないこと。やはりその根幹は変わらないので、三井住友フィナンシャルグループしかり、ヨーロッパの企業は中長期的な投資は止めず、あくまで“一旦様子見”という形だろう」と分析した。
とはいえ、長い目で、地球や人類のことを考えればこのままではいけないのではないか?
「そうだ。本当に難しく、脱炭素・再エネにするとその分コストはかかる。アメリカの製造業とかUSスチールの話もそうだが、ブルーカラー、そして途上国の人たちは、ただでさえ生活が苦しいのに先進国のせいで脱炭素を迫られ、しないと支援はしないという形になって、生活コストが上がる。そのため、脱炭素を中長期で行っていかないといけないのは事実であるものの、そうした低所得者層の人たちの、ただでさえベースラインが低い人たちの生活水準を下げてでも短期で脱炭素を進めるべきなのかと言われるところは、経営者としては懐疑的にならざるを得ない。この対立、株主は儲けてほしい、企業経営者としては中長期に投資をしたい。株主といってもいろいろな“質”があるので、この違いが如実に今後現れてくる」と述べた。
さらに牧浦氏は自身の取り組みについて「我々も脱炭素のアライアンスを日本でも三菱UFJ銀行らと一緒にやっている。当然、途上国の人たちの生活水準の向上が最初のミッションとしてあるものの、脱炭素も進めないといけない。ただ、やはり企業経営者としても、短期の利益も重要で、中長期も張っていかないといけないということで、さすがにドラスティックに“全部どちらか”という方法はしたくないものの“うまいバランス”を取らないといけないと株主の皆さんと議論している。ただ、自分としても思いがあるので、貫きたいところは貫きたい」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)


