ロシアによる本格侵攻から3年。ウクライナが30日間の停戦案を受け入れる用意があると発表した。
米・ウクライナ共同声明や今後の展開などについて、アメリカ現代政治外交が専門の前嶋和弘教授に聞いた。
先月、トランプ氏とゼレンスキー氏との間に起きた“口論”とその後の動きについて前嶋教授は「基本的に罵り合いというかケンカというか、もっと言うとゼレンスキー氏に対する“公開いじめ”だと思う。あの一件以降、“トランプ氏が思うように”動いている。アメリカとしては『戦争に勝っているのはロシア』『ロシアとしっかり話していく。問題ないよね?』と認めさせ、同時にロシアに騙されるかもしれないウクライナは『安全を守って』という狙いがあるが、それに関しては(アメリカは)話をごまかしている。ウクライナとしては面倒くさい条件だが“生殺与奪の権限”を握っているのはアメリカなので受け入れざるを得ない。さらに『このままウクライナが孤立してはいけない』とヨーロッパ、特にイギリス・ブレア政権の側近あたりがだいぶ動いて話をつけている。今後は大きな展開だ。ロシア側に球は投げられた。どうなるかまだ分からないが、とりあえず停戦になる可能性は見えている。停戦の時の細かなことは全く何も決まっていないが、とりあえず次が動いたことは歓迎していいと思う」と説明した。
米・ウクライナ共同声明要旨は以下である。
・ウクライナは米国が提案した「30日間の即時停戦」を受け入れる用意がある
・停戦はロシアの受諾と順守が条件で、双方の合意によって延長も可能とする
・米国は、ただちに機密情報の共有、軍事支援を再開する
・米 ・ウクライナは、ウクライナの資源に関する協定をできるだけ早く締結する
など
レアアースに関しては具体的な言及はあまりなかったとされている。共同声明について前嶋教授は「『30日間の即時停戦を受け入れる用意がある』。これはウクライナ側が認め、そしてロシアと話している。これとともに大きなポイントが3つ目の支援再開・軍事情報共有だ。これがなかったらやっぱりまずかった。ウクライナは本当にこのまま見捨てられる状況になることからは逃れ、なんとかロシアとの戦争継続ができるという状況にはある。4つ目の鉱物資源の問題はそもそも海のものとも山のものとも分からないような話で『いつかはとれるだろう』と。7年ぐらいかかり、トランプ政権が終わった後だ。ただ、問題はその鉱物資源の3割5分ぐらいがロシアにも取られている。ロシア側もこれを開発しようとトランプ氏にも言っていて、ロシア側は中国というレアアースを採掘するのが最もうまい国と契約を進めていて『いつでもとれますよ』と。だから今レアアースの話をすると“ロシア側の話”になってしまうので今回出なかった」と解説。
プーチン氏はどう出てくるのだろうか?
前嶋教授は「戦況が有利な方はロシアなのでアメリカ側からかなりの譲歩をしなければいけない。プーチン氏にとってみれば“棚からぼたもち”という状況で、どんどんいい条件が出てくるし、難しいことを言ってくると思う。最初は多分『ゼレンスキー氏を辞めさせろ』とか『今後二度とアメリカだけじゃなくて欧州もウクライナを支援するな』とか。そんなことを言ったら納得できない状況になってしまい、停戦ができない。とはいえ、ロシアとしてはトランプ氏の顔を立てておいた方が後々プラスだと。(プーチン氏とトランプ氏の)2人が表面的にはまとまったように見せるような動きもあるのかもしれない。もしかしたら、ウクライナにとってとんでもない条件が後々出てくる可能性もある」と分析した。
一方でトランプ氏とプーチン氏の関係性については「大学4年生と1年生みたいだ」という。
「過去何回かトランプ氏とプーチン氏が話しているが、トランプ氏がすごく気を遣って『大先輩お願いします』みたいな感じ。本当に大学の4年生と1年生みたいな。かつてプーチン氏の側近にビジネス的に助けてもらったことがあるかもしれないし様々な理由が考えられるが、一国の大統領がそんな個人的なことで決めてもらっては困る」
トランプ氏の本音は?
「一番の本音は、アメリカはもう武器支援・ウクライナ支援をやめること。そうすると支持者が喜ぶ。言葉は悪いが、『ゼレンスキー氏という“ゆすりたかりの類”ともう縁が切れる』とトランプ支持者は思っている。ただ、世界的には『私が和平をしたんだ。私は平和の大統領なんだ。これで命は救われたんだ』とノーベル賞的な話も出てくるかもしれない。平和の大統領だという国際的なメンツは保たれ評判も高くなる可能性もある」
(『ABEMAヒルズ』より)


