■警察に4つのミス?
川崎市で起きた死体遺棄事件について、警察に対してはポイントとして4つのミスが指摘されている。1つ目は被害者からのストーカー相談を軽視したのではないかという点。女性は行方不明になった12月に9回も通報したが、警察から男に対して警告などは発出されなかった。2つ目は避難先の祖母宅のガラスが割れるなどし、後に行方不明になった後も事件として扱われなかった点。3つ目は行方不明後、加害者宅に訪問したが被害者が遺棄されていた床下を確認しなかった点。4つ目は1月に加害者家族から「彼が殺したかも」と証言した通報を軽視したのではないかという点だ。
佐々木氏は「最悪の結果になってしまったということに関して被害者の遺族、そして世論が警察に対して不信を持つのはすごく当たり前だと思う。ただ実情を知る者としては、かなり(ストーカー行為の)判断は難しかったというところもある」と述べた。では、どのあたりが「難しかった」のか。「ストーカー規制法というのは、被害者の申し出が明確に出ないといけない。『拒否をしている』という申し出がしっかりないと、ストーカー規制法違反で警告なり禁止命令ができない」。
川崎市の事件では被害者が9回も通報したが、それでも足りなかったのか。「警察も『警察署に来てくれ』と言ったが、被害者が来られなかった。もしかすると(加害者が)怖くて来られなかったかもしれないが、その申し出を明確に受け取れなかった」。さらにネックになったと思われるのが「復縁」だ。女性は昨年6月から度々、警察に対して「彼氏とけんかになった」「刃物を向けられた」などと通報、さらには被害届を出したが後に復縁したとして被害届を取り下げた。また11月には「元彼から暴力を受けた」と通報、警察から加害者に口頭注意が入ったが、同じ月に女性の父から「娘がいなくなった」と通報、男との復縁が判明した。この流れに佐々木氏は「復縁を繰り返しているが、そうなるともうストーカーではなくなってしまう。復縁しているカップルの男性に対して『禁止命令が出たから会ったら逮捕』ということを警察の主観でできるか、この判断は難しい」と述べた。
被害届の取り下げについては、男に言われて女性が取り下げたという可能性も否定はできないが「それを警察が認知していたら取り下げを無効にするはず。今回、警察と被害者、被害者のご遺族とのコミュニケーションが足りなかったというところは否めない。遺族が言っていることを全て警察が把握できていなかったという事実もある。ただし何回も相談を受けていたからといって『被害届を取り下げないでください。警告させてください』と全ての相談に警察が対応するのは、マンパワーとしてはかなり厳しい」とも語った。
■相談件数2万件から重大な1件は防げるか
