■産後2カ月で発症「子どもの泣き声が恐怖」
産後2~3日で発症する「マタニティーブルー」と数週間後から数カ月後に発症する「産後うつ」は、不眠や涙もろくなるなど似た症状はあるものの、前者は時間経過とともに自然に回復するケースが多い。後者は治療をしないままだと改善しにくく、個人差はあるが長期化するケースもあるという。産後うつは妊娠中は豊富に分泌される女性ホルモンが、出産から生理が再開するまで分泌されなくなることが要因とされている。また母親が目を離せば子どもに命の危険すらあるという重い責任からくるプレッシャー、さらに授乳で睡眠不足が続くといったことも、産後うつを引き起こしている。
産後4週間まで自宅で母が泊まり込みのサポートをしてくれたミカさんだったが、母が帰った後から「孤独感、不安感が高まってきた」という。はっきりと症状を自覚したのは産後2カ月ごろ。「子どもの泣き声にものすごく恐怖を感じて、震えが止まらなくなった。抱いていた息子を落としそうになるぐらい力が抜けて、そのままボロボロ涙がこぼれてきた。ひたすら恐怖に怯えていた時期だった」。
夫は仕事から早く帰宅するなどサポートがあり、また周囲のコミュニティーにも参加はしていたミカさんだが、症状は悪化の一途をたどる。産後間もないころには感動したメッセージが、うつ状態ではプレッシャーに転じてしまうこともあった。それは義母からの手紙だ。「すごく尊敬している義母から、産後の入院中にお手紙をいただいた。おめでとうという気持ちと一緒に『赤ちゃんは四六時中泣いて大変だと思うけど、その都度お母さんが泣いているとか、うるさいなとか思うと(子どもが)敏感に察知をするので、いつも穏やかな気持ちで接してあげてね』と書いてあった」。まだうつになる前に読んだころは「なんていい言葉なんだろうと感動した」が、「心に留めていつも気持ち悪いぐらいの笑顔で子どもに接していたが、気負いすぎだったと今は思う」。
同じように小さな子どもを持つ母が集まる支援センターにいっても、気持ちは晴れるどころか、さらに沈んだ。「支援センターで会ったお母さんと話した時も、私はこんなにも黒い感情というか、しんどい・つらい・眠れない・怖い気持ちを抱えているけど、他のお母さんはキラキラして見えてしまった。私はダメな人間だとどんどん孤独感が増していった」。
■精神科・心療内科も予約取れず…
