■“稼げる農家”徳本氏「我々のような農業経営者は縁故米をあげない」
農業ジャーナリストの小谷あゆみ氏が、“縁故米”について説明する。「農家が親戚や知人に贈る米で、発送したり、帰省時に持って帰ったりする場合もある。“お歳暮のお米版”と考えていいのではないか。無償が多いが、物々交換などのパターンもある」。
政治資金規正法では、政治家個人への金銭や金券の寄附(献金)は原則禁止されているが、物品については150万円相当が可能だ。「政治家に渡すということに見返りを求めているかはわからないが、日本人が1年で食べると言われているお米は50キロぐらい。5キロ4000円だとしても4万円で、なかなか上限を超すことはないだろう」とみる。
「農業は儲かる!」と主張している米農家の徳本修一氏は、「縁故米はほぼやっていない」と語る。「日本の米作りは兼業農家が支えてきたが、兼業農家は本業があり、米作り自体で食っていない。そうした農家が家族や親戚に、今年取れたお米を贈るカルチャーが根付いていた。しかし我々は米作りを経営としてやっている。製造原価がかかり、利益で食わないといけないため、我々のような農業経営者は基本あげていない」。
政治家との関わりについては、「江藤氏のように中山間地域が選挙区の国会議員は、縁故米が当たり前のカルチャーだ。『水田は票田』という例えがあるくらい、農家の投票で選ばれる農水族議員がいる」としつつ、「農業経営者から見れば、縁故米はコメ全体の価値を下げている。兼業農家が高齢化でリタイアする中で、そのカルチャーも時代に合わなくなってきている」との認識を示した。
さらに、「友達になってほしい」との連絡が全国から来るというが、「全部迷惑だ」と断言。「農業で利益を出すのは相当大変で、僕らもBtoCは一切やっていない。安定供給して、卸を経て、スーパーに並ぶ。その先で消費者が適正価格で買えば、良い循環ができていく。産業としては、消費者にちゃんと買ってもらうのが一番ありがたい」と訴えた。
そうした中、小谷氏が提唱するのが「友産友消」という考え。ともだちが生産して、ともだちが消費する、地産地消よりもっと自由で近い関係のことで、安く買わせてもらう代わりに他の友達に宣伝するなどができる距離感をあげる。また、つながりのある仲間がサポートする農業「CSA(コミュニティサポーテッドアグリカルチャー)」も説明。年間契約で先払いすると毎月お米が届く、田植えや稲刈りにいくといったまさに親戚付き合いのような関係を促した。
■ライブチケットや講演なども 米だけではない“縁故”、その是非
