犯行の一部始終を、カメラが捉えていた。1回目だった2024年6月の窃盗は15時30分ごろ、オレンジの帽子とマスクをつけ、作業着を着た男が裏口から現れた。慣れた手つきでカギを開けて、バックヤードに侵入してすぐ、酒入りの箱をケースに入れる。

 映像を見た元徳島県警 捜査一課警部の秋山博康氏は、「侵入してすぐ被害品に進んでいる。何がどこにあるかを分かっている人物が犯人だ」とみる。別のケースでフタをして隠し、酒を奪うまで、わずか2分足らずの犯行だった。横山専務は「ここに出入りするのは、うちの従業員と、お酒を納品する業者や清掃業者とか、いくつかの業者にカギを渡していた」と振り返る。

 2回目となる2025年2月の窃盗は、9時15分すぎ。クラブ前の駐車場から来た男は、前回と同じ帽子とマスクをかぶっていた。バックヤードから出てくるが、別の業者が近づいてきたのに気づいて、いったん隠れる。

 しかし業者が去ると、ふたたび姿を現して、冷蔵庫を開け始めた。横山専務は「冷蔵庫のかぎは事務所で管理している。社員以上というか、アルバイトの方は(触るのが)厳しい。スタッフが複製したか、もう1つの業者か…」と語る。犯人については「把握している中では、誰かは分からなかった」そうだ。被害後、買取店などを回ったが盗まれた高級ウイスキーなどを見つけることはできていないという。

 ジャパニーズ・ウイスキーは価格高騰が続き、買い取り専門の大黒屋によると、「山崎 25年」の買い取り価格は、10年前の15万円から、5倍以上の88万円になった。

 ダンスクラブは被害を確認したあと、すべての階の扉に防犯システムを設置した。かぎも全て取り換え、防犯カメラも店外含め14台増やした。警察に被害届も提出したが、容疑者逮捕には至っていない。

仲間周りが犯人の可能性?
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