6月21日(土)神奈川・横浜BUNTAIにて「OURO presents RISE WORLD SERIES 2025 YOKOHAMA」が開催され、那須川龍心がISKA K-1ルール 世界ストロー級(-51.5kg)王座決定戦でハマダ・アズマニに判定勝利。自身初となるビッグマッチのメインイベントで勝利し、かつて兄・天心も巻いたISKA世界王座のベルトを手にした。
2023年6月の相沢晟戦から連勝街道を突き進んでいる龍心。昨年11月には数島大陸をKOしてRISEフライ級(-51.5kg)王者となり、今年3月のRISE両国大会では天心と判定までもつれたムエタイの強豪クマンドーイ・ペッティンディーアカデミーを2RKOで沈め、破竹の9連勝・4連続KO勝利という快進撃を続けている。今大会では天心をはじめ、多くのトップファイターたちが手にしてきたISKAの世界王座決定戦に挑み、後楽園ホール以外のビッグマッチでのメインイベントを任される形だった。
龍心自身も「この試合は『今後この選手をメインイベントで使えるのか使えないのか?』という、RISEからの試練」と位置づけた一戦だが、いざ蓋を開けてみると対戦相手のアズマニが予想以上に厄介な相手だった。アズマニは独特の間合いから繰り出す変則的な攻撃で龍心を翻弄。龍心も徐々にアズマニの動きを捉えはじめ、3Rに左フックや右ローを効かせる場面があったものの仕留めきれず。判定勝ちという結果に表情を曇らせ、ベルトを巻かれてからも笑顔はなかった。
ABEMA中継での解説を務めたRIZINファイターで、初代K-1ウェルター級王者の久保優太も「アズマニは距離を使うタイプで、ちょっと攻撃を効かされたら組みつく距離にいて、そこからのこかしだったりを上手く使っていた。あの展開に持ち込まれたらやりづらい」とアズマニの曲者ぶりを認めたうえで「3Rに龍心選手のローが効いていたので、あの展開を1~2Rから作れていたら、もっと(フィニッシュが)変わっていたかもしれない」と分析する。
龍心は試合後に「倒そうとしすぎてパンチばかりになった」と反省していたが、久保も「どうしても倒そう倒そうとすると、パンチを振り回してしまう。やはりキックボクシングはパンチと蹴りのバランスが大事で、パンチだけになってしまうと、相手はディフェンスしやすい。逆にパンチも蹴りもあると、相手の注意が散るし、攻撃を上下に効かせることができる。効かせられる箇所が増えると、それだけ倒すチャンスが増える」とパンチで倒せるからこそ、これからは蹴りが重要だとアドバイスする。
龍心は今年5月16日に19歳の誕生日を迎え、今まさにメインイベンターとしての道を歩き始めたばかり。今回の試合も決してアズマニに敗れたわけではなく、連勝そのものは続いている。久保が言うようにアズマニ戦をきっかけにパンチと蹴りのバランスを整えれば、もうワンランク上の倒せる選手になるはずだ。試合後に龍心は51.5kgでの戦いに区切りをつけて、53kgへの転向を宣言。久保は新たなチャレンジに向かう龍心にエールを送った。
「我々やファンが求めるものが大きすぎたというか。4連続KOで来ていて、今回はどう倒してくれるんだろう?と思って見ていたと思うんです。僕も事前番組の方で解説・分析させていただいたのですが、そこをかなり期待してしまったところがあったのかなと思います。でもよくよく考えたら龍心選手はまだ19歳ですし、19歳でこのビッグマッチのメインイベントを務めるだけでなく、KO勝ちを求めるというのはちょっと酷だったのかなと思います。今回の試合でISKAのベルト巻いて、連勝は続いているわけですから、そこは素直に喜んでもらいたいですし、また強くなった龍心選手を見たいなと思います」
試合に勝って悔しがれるのは、それだけ伸びしろがあるということ。その意識の高さが龍心をさらに強くするに違いない。
文/中村拓己

