男子バスケットボール日本代表は、アジアカップに向けた強化試合の前日練習に臨みました。
注目は“あきちゃん”ことジェイコブス晶選手(21)です。トム・ホーバスヘッドコーチ(58)期待の選手でアメリカの大学でプレーしています。
ここまで強化試合でチーム2位の得点ながら、まだまだ満足はしていないようで…。
ジェイコブス選手
「(ホーバスHCからは)まだ全然足りないと言われている。それくらいまだ伸びしろがある。もっと活躍できるようにしたいと思うし、活躍を見せられると思うので頑張りたい」
松岡修造さん
「アジアカップが近付いてきます。トム・ホーバスヘッドコーチに話を聞いてきました。女子日本代表は東京オリンピックの銀、そして男子日本代表ではワールドカップ、パリオリンピックへと導いていった指導者としてもしっかり結果を残しているんです。そして今、アジアカップ、また、3年後のロサンゼルスオリンピックへ向け新しいチーム作りをしているんですね。トムさんがチーム作りで大事にしているのが調和。チーム作りは盆栽だ!」
カギは「盆栽」新たな才能育成中
今月、アジアカップに向け本格的に始動した日本代表。トム・ホーバスヘッドコーチは新しいチームの作り方を独特な言葉で表現しました。
「きれいな盆栽。盆栽は日本のバスケットボールのイメージ。盆栽の中で選手全員がそれぞれのスタイルを見せてほしい」
松岡さん
「盆栽、つまり良いチームを作るために一番大事なことは?」
ホーバスヘッドコーチ
「才能とスキルは人それぞれだから、盆栽の完成図も選手によって異なります。でもメンタリティは全員共通です。規律、チームワーク」
松岡さん
「トムさんが選手たちのマインドを変える必要があった?」
ホーバスヘッドコーチ
「Yes」
松岡さん
「それは簡単なことですか?」
ホーバスヘッドコーチ
「仕事です」
一人ひとりに合わせた指導
選手それぞれの個性を生かしつつも、規律とチームワークで調和がとれているのが理想のチーム作り。それを盆栽に例えていたんです。では、どのように整えようとしているのでしょうか?
強化試合に先駆けて行われた合宿では、若手を中心に19人を招集。大声での指導が印象的なトム・ホーバスヘッドコーチですが、じっくりと観察し、一人ひとりに声を掛けていました。
例えば、今月代表デビューしたテーブス流河選手(21)。アメリカの名門大学に所属するオールラウンドなポイントガードには…。
ホーバスヘッドコーチ
「意図的に彼を混乱させました。流河はドリブルがすごくうまいけど、毎回されると困る。流河はアメリカでプレーしていてすごい自信があるけど、プレースタイルがまだ日本のバスケとちょっと違うから、今修正したらアジアカップで良くなる。これからもっと日本のためにできる。でも今修正しないと、おかしくなる。ずっと」
自らドリブルで仕掛けるアメリカでのプレースタイルばかりでなく、戦術ファーストな動きも求める。ここに伸びしろを見出していました。
そしてもう1人、パリオリンピックに最年少で選ばれた21歳のジェイコブス晶選手。アメリカで育ち、現在ニューヨークの大学でプレーするエース候補には意外な要求をしていました。
ホーバスヘッドコーチ
「ジェイコブスはハングリーだけど、優しい」
「彼はプレーに波があった。優しいから彼はいつも挨拶がすごい明るい。僕はジェイコブスに『あなたのスマイルが見たくない。もっともっとアングリーなプレーが見たいです』と言った。彼はその後は(低い声で)『おはようございます』」
ジェイコブス選手の優しさを受け入れながらも、勝負の場面では厳しさを求めるため、普段の生活態度を意図的に変えるよう伝えました。
現役時代から交友のある、元日本代表、シーホース三河チームディレクター・佐古賢一さんはこう話しました。
佐古さん
「若い頃はトムに色々なことを教わりながら、注意されながら成長してきた人間ですし、僕とかちょっと特徴ある人間にちゃんと節度あるアドバイスをくれていたという意味では、本当に日本人より日本人の部分をすごく大事にしている」
ホーバスHC「最初の5歩が大事」
規律とチームワークを重んじる盆栽のようなチーム造りはこんなプレーによく表れています。それが、日本の武器の1つである速攻です。
ホーバスヘッドコーチ
「最初の5歩、みんなに今教えている。5ステップが大事です」
大事なのは守備から攻撃に移る最初の5歩です。リバウンドを取ってからの速攻の場面。リバウンドを取る前のジェイコブス選手に注目。味方が取ってから5歩で最前線に。自らがおとりになったことで味方がフリーでシュート。全体がより素早い動き出しで有利な状況を作りだし、得点に結びつけました。
ジェイコブス選手
「みんな1人ひとりの役割がチームとして分かり始めていると思う」
さまざまな選手を集め、チョキチョキ形を整えて、全体を美しく日本代表をさらに価値のある盆栽に育てようとしています。
ホーバスヘッドコーチ
「選手たちはみんな若く、自分を信じている。しかし選手の自信には“天井”があります。“ここまでは”自信がある。でも私にはもっと高い“天井”が見えている。私は選手をより高い水準に持ち上げてやりたい。今は枝葉を伸ばし、見た目を整えるのはこれから」
松岡さん
「タフさが求められる1番難しい部分なのでは?」
ホーバスヘッドコーチ
「仕事です。楽しいですよ」
手間暇かけて調和 盆栽のような育て方
徳永有美キャスター
「ホーバスさんが盆栽という日本の価値観をもとにして、一人ひとりに繊細に指導している、まとめ上げているのが面白いですね」
松岡さん
「僕はトムさんの指導力を尊敬していますけど、トムさんのイメージってどちらかというと情熱的でこれじゃなきゃだめですという強い印象がある。今回はそれだけじゃなく、特に若い選手に関して、ありのままの個性をまず受け入れて変わっていくまでじっと待つ。それは、ありのままを生かしながら手間暇かけて調和していく盆栽のような育て方なんだなという感じがしますね」
大越健介キャスター
「時々わざと選手を混乱させるんだと言ってましたよね。それによって選手たちが感じている天井よりももっと上があるんだよと分からせるということですね」
松岡さん
「そこには大事な信じる力があるからこそ、できるんだなと思いましたね」
大越キャスター
「魅力的な人ですね」
(「報道ステーション」2025年7月18日放送分より)