■「ある国のbotファームが怒りを増幅させた」

外国勢力の狙いは?
拡大する

 参院選をめぐっては、平大臣のもとに「民間の各方面から『他国からの介入があったのでは』とのレポートが上がってきた」という。その概要は「人間ですらない偽アカウントの集合体である、ある国の“botファーム”から、社会の分断や、政党の応援・批判のSNS投稿が短期間で行われ、『バズっている』状態にして、関心のない人のタイムラインにまで拡散させた」といったものだ。

 情報を知り、なにか対応は取ったのか。「政府自体は何も対応していない。一部では『政府・与党に不都合な投稿を凍結させた』と言われていたが、それは一切ない。日本の法律に抵触する、児童ポルノや金融・なりすまし詐欺の投稿は、プラットフォーマーにやめるよう求めている」。

 ネット上では、平井卓也元デジタル大臣が、アカウント凍結をめぐり「相当消し込みにいっている」と発言したことが話題になっている。「政府はやっていない。自民党にもそんな力はない。党にできることは、『規約違反ではないか』といった一般的な通報程度。平井氏が言った“消し込み”は通報を意味しているのだろう」。

 投稿の内容については、「政権を不安定にさせるために、政権・与党批判や、日米を引き離したり、民主主義・科学的知見に疑念を持たせたりして、ネガティブな印象を与える」と説明。対策としては「民主主義の根幹である選挙に、外国勢力が介入することはあってはならない。ただ検閲して止めることもあり得ない」と語った。

 そこで浮上したのが、法整備だ。「先進国では、刑法改正で罰則を科したり、政府内で方針を定めたりしている。スウェーデンでは、隣国からのプロパガンダに対して、国民を啓発する“心理防衛庁”ができた」。

 「民主主義においては、政府・与党どちらへの批判も自由でなくてはいけない。ただ、外国勢力の干渉はあってはならない」との考えを示しつつも、どの国からの介入だったかは、具体的に「言えない」のが現状だ。「パブリックアトリビューション(サイバー攻撃の実行者や背景にいる組織への言及)は、慎重にタイミングを見なければならない」。

 現状の枠組みでも、「国民がメカニズムを知れば、投稿を見て『ちょっと待てよ』となるかもしれない。『せめてbotは消して』『選挙期間中は』といったやり方もあり、いきなり表現の自由に踏み込むことはない」とした。

 サイバーセキュリティー会社のレポートによると、「特定政党を応援しているわけではなく、G7であれば極右・極左・陰謀論に張っているだけ」だという。「たまたま主張が海外勢力の物語に沿っているから、ブーストをかけているだけ。別の政党の方が分断を図れると思えば、次はそちらへ行く」。

 そして、「政府の対応だけでなく、啓発活動を通じて、国民のリテラシーを高めるべきだ。各政党がもっと研究して、超党派で『政府はこれをやれ』と提言してくるべき事案だ」と呼びかけた。

■新法で有害なアクセスを無害化
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