■政府「コメはある」から一転「見誤った」
これまで政府は、江藤拓前農林水産大臣が「コメ自体は間違いなくある」「流通に問題がある」などと発言し、日本におけるコメの生産には問題ないと伝えてきた。ところが今回、石破茂総理は「生産量に不足があったことを真摯に受け止める」、小泉農林水産大臣も「消費の動向を見誤った」と発言し、コメ増産への転換を決めた。農水省の調査を見れば需要実績、需要見通しともに2022年までダウントレンドだったところが、2023年は23万トン、2024年は37万トンも見通しを実績が上回り「コメ不足」が生じている。
兵庫県豊岡市のコメ農家で坪口農事未来研究所取締役の平峰拓郎氏は、ここ数年のコメ不足は予想できたものと語る。「コメ不足は、言われる当初から感じていた。収量が少ないという話は、全国のいろいろな方から聞いていて、不足することはわかっていた」。また横浜で3代続く米屋の店主で水田環境鑑定士の芦垣裕氏も「政府が本当に見誤った。もう一昨年からコメは足りないと言われ始めていた。昨年の7月ぐらいからスーパーからコメが消え、その後に南海トラフの問題もあってさらに加速して騒ぎになった」とし、理由としては「インバウンドの関係もある。それから不景気ということもあって、家庭内でご飯を食べる率がすごく多くなった」と、過去最多のペースで訪日する外国人観光客による消費量の増加、また日本人が外食を控え家庭でコメを消費する量の増加を見誤ったと指摘した。
さらに今年は猛暑による渇水が起きている。平峰氏は、豊岡市の状況について「40度近い高温が非常に長く続いていた。コメが一部枯れてしまい、田んぼも白く割れている。去年ぐらいからカメムシの被害も非常に増えていて、コメ作りが非常に厳しい状況だ。現時点では1~2割は枯れているが、玄米にしてみないとわからない。2~3割は(収量が)減るかも知れない」と見立てている。政府も渇水対策としてヒト(MAFF-SAT=災害緊急派遣チームの派遣)、モノ(国土交通省と連携して給水車等の活用)、カネ(ポンプ、番水等の50%の諸経費補助)と3本柱を掲げているが、平峰氏からすれば「少し対策が遅い」と感じているという。
■増産への転換、現場はどう対応する?
