■増産への転換、現場はどう対応する?

コメ不足と価格高騰の理由
拡大する

 増産への転換と言われる中、今年生産される主食用のコメは、昨年より56万トン近く増えた735万トンになる見込みだと農水省は発表している。ここからさらなる増産を目指すために政府は耕作放棄地の活用、スマート農業技術の活用による生産性の向上、輸出の抜本的な拡大などを掲げるが、現場である農家はすぐに対応ができるものなのか。

 平峰氏は転換に関わる課題を複数あげた。「課題はたくさんある。農水省の方針として、たとえばWCS(稲発酵粗飼料。主に家畜用)や野菜などに転作することを勧めて減反になった。飼料用米から主食用米に切り替えるのは比較的簡単だが、また戻すとなると今度はWCSが必要な畜産農家が困ってしまう」。仮に飼料用米から主食用米に切り替えれば、今度は飼料の高騰へとつながり、牛肉などの価格高騰も招くと懸念する。また耕作放棄地の活用については「面積にしたら微々たるもの。そこをいくら広げても増産にはつながらないと思う」と見解を示した。

 政府としては、同じ面積であっても収量が増える品種を推進する動きがある。元農水官僚で自民党の進藤金日子参議院議員は「面積あたりの収量が高い品種をどんどん開発している。質とともに量も取る、そういう高度な品種改良を行っている」。ただここにも課題があり、日本では「コシヒカリ」という一大ブランド米があり、“コシヒカリ神話”と呼ばれるほどの支持を受ける。他種はどうしてもコシヒカリより安くなるため、なかなか現場の農家としても他種に切り替える決断が難しいという。それでも芦垣氏は「ある一定の年齢層は粘りと甘みのあるコシヒカリが大好きだが、若い方はさっぱりしたコメが好き。これから好みもだんだんそういう品種に変わってくると思う」と期待していた。また日本におけるコメの価値については「日本のコメは歴史上、貨幣と同じように扱われている時期もあった。コメはやはり日本の心だ」と加え、日本人の主食である以上のものであると付け加えていた。
(『ABEMA Prime』より)
 

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