■iPS細胞で精子と卵子ができる

報告書のポイント
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 iPS細胞から受精卵を作るとはどういうことか。まず“万能細胞”とも呼ばれるiPS細胞から精子、卵子のもとになるものを作り、それぞれ卵子や精子を作る。ここまでの研究は従来から認められていた。今回の報告書では、さらに受精卵まで段階を進めることが認められた。培養期間は最大14日で、人や動物などの子宮に移植することは禁止。ただし受精卵になることで“命”は生まれており、これが認められることが論点になっている。

 筑波大学附属病院の再生医療推進室・副室長を務める三嶋雄太氏は「一般の方にとっては、いきなりルールができたと思うかもしれないが、iPS細胞由来の受精卵を作っていいかということは3年前ぐらいから議論が始まっており、今回は中間報告書だ。これで合意が取れれば、来年にはできるようになる。ただし、また実際に人の卵子や精子ができるところまでは行っておらず、その手前の細胞ができたところだ。ただしマウスでは受精卵から子どもが生まれ、次の世代まで問題なく生まれている」と現状を語る。

 さらに今回の方針については「研究者からすれば、先にルールを決めておかないと後で『こんなことはダメだ』と言われると困ってしまうので、先に社会や倫理の専門家とのコミュニケーションが必要だし、この報告書でも社会的妥当性と科学的合理性の2つを詰めていくことになる」と説明した。

 iPS細胞は人から取り出した体細胞から遺伝子やタンパク質といった因子を取り出し培養することででき、非常に多くの細胞に分化できる万能性を有する。ではクローンとは何が違うのか。三嶋氏は「クローンは46本の染色体をそのまま移植する、完全な自分のコピーだ。iPS細胞から卵子や精子を作って受精卵を作った場合は、両方から23本ずつランダムで選んでくるので、コントロールはできない」という。また、男性の体細胞から生まれたiPS細胞だったとしても「マウスでは卵子を作ることができた」という。

 つまり人の男性カップルだったとしても、一方の男性からiPS細胞で卵子を、もう一方は精子を作り、そこで受精卵を作れば子どもを作れることになる。「人でもできるようになるまで5年ぐらいと言われている。人類がすごく違うフェーズに行く」と近未来について語った。

■14日以降の受精卵はNG、その理由は
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