■「談話」は見送り、「見解」に
まず戦後80年で石破総理が「談話」ではなく「見解」として出す見通しになったことの理由について、専門家はどう見るのか。自民党・前参議院議員で元陸上自衛官の佐藤正久氏は「時間切れという部分がある」と石破総理の準備不足を指摘する。「石破総理は優柔不断。総理に就任した秋から、どうやって出そうかと準備すればよかったものの、年明けから『やりたい』と言い始めた。ただ、これを出すと自民党内から反発が来るかも知れない、参議院選挙に影響が出るかもしれないとフラフラしているうちに、有識者を交えた会議が開かれないままここまで来てしまい、8月15日に間に合わなくなった」。
70年に談話を出した安倍氏との比較では「安倍総理は半年かけて、いろいろなことをした。これを出した時に国内からどう反応があるか、あるいは中国、北朝鮮や韓国、ロシア、アジアからどう見られるか、多角的な観点から有識者を招いて意見を聞いて『自分はこうやりたいがどうか』ということで出た談話だった」と述べた。
高千穂大学教授で政治学者の五野井郁夫氏も、国内外に向けて節目に談話が発出されてきた意味合いを重く受け止めている。「海外からすれば今日本はどうしたいのか、何を考えているのかわからないが、日本はこういう立場だと広く伝えるものが談話だ。その意味合いは50年の村山談話、60年の小泉談話、70年の安倍談話も変わらない。日本がお詫びと反省の上に立って、戦後の国際社会を平和に作っていこうという姿勢は変わらないということを、凡庸でも伝えていくのはとても重要だ」と、たとえ過去の談話と内容に差はないとしても出すべきだと訴えた。
さらに石破総理が、80年のタイミングで談話ではなくなったにしろ、見解という形でも出したいという意欲を見せたことには「今回の参院選であれだけ負けて、党内からも責任を取るべきだと言われているのに総理に残っているのは、やはり80年目の歴史認識をしっかりさせたいと思っているのではないか。広島平和記念式典での挨拶でも、原爆詩人の方の短歌を引用するなど、いろいろなコメントを出した。石破総理本人は腹案をずっと用意していると思う」と、退陣を求める声も多数ある中であってもやり通したいものだと解説した。
過去には防衛大臣も務めた経験を持つ石破総理だけに、五野井氏は内容や、そのもとになる歴史認識については一定の信頼を持つ。「石破総理はミリタリーオタクでもあるし、最新の研究結果も踏まえているはず。いろいろなことがブレていることは認めるところだが、戦争と平和の問題、そして歴史認識についても石破総理は筋を通せるだろう」と予想した。
■9月2日に出すことの問題点
