■世界的に広まりつつある“動物虐待”

BBCの報道内容
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 8月4日のBBC報道によると、猫を拷問する動画を共有・販売する国際オンラインネットワークが存在し、暗号化されたメッセージ上で数千人が参加。中には東京在住・27歳男性もいる。ロンドン北西部の公園で殺された2匹の子猫が、切り開かれ吊るされている状態で見つかり、5月に17歳の男女2人を逮捕した事例もある。

 BBCの報道によると、グループ内で投稿・販売している映像は「猫を溺死させる」「ケージに入れ餌を与えない」といったものから、猫を感電死させる内容まで存在する。苦痛を長引かせるため「蘇生させるにはこうやって感電させるといい」などのチャットも書き込まれているという。また、どれだけ早く殺すことができるか競う“猫100匹殺害”コンテストもあるそうだ。

 NPO法人「どうぶつ弁護団」理事長の細川敦史弁護士は、「中国で虐待されている情報はSNSで見ていたが、外国の話のため不確かだった。ただ報道や警察の捜査もあることから、それなりに確かだろう」との見解を示す。「中国では自分のペットや野良猫への虐待は処罰されないと聞いている。だからこそ、中国で虐待動画が製造されやすい。アメリカやイギリスでは、虐待そのものではなく、他人が作った動画でも上げると処罰対象になる。アメリカは動物虐待にフォーカスしているが、イギリスは有害動画をまとめて規制する中に虐待を入れている」。

 犯罪心理学者で東京未来大学教授の出口保行氏は、「小動物を殺害し、それが人に脅威を与えるのを楽しむ“負の循環”が、我が国の中でも始まってきている」と危惧する。「小さな頃に虫を殺すのは当たり前だ。シリアルキラー(連続殺人犯)も幼少期のそうしたエピソードにたどり着くが、かといって幼少期にそうしていた人が殺人鬼になるわけではない。子どもは生命の価値がわからず殺してしまうが、途中で『命は大事だ』と学び、殺人につながることはほぼない」。

 しかしながら「ずっと続いてしまうタイプもいる。生命の大切さに気付かないままエスカレートしてしまうと、虐待を起こしやすい」といい、「攻撃性は誰にでもあるが、社会の中で抑圧を求められる。犯罪者の心理分析を約1万人やってきたが、時代によって攻撃性の表現が変わっているのは確かだ」と指摘する。

 とはいえ、「攻撃性も注目ポイントだが、歪んでいる自己顕示欲のほうがよほど強い」とも語る。「放火も最初は、人里離れたところで火を付けて、だんだんと人に近づいていく。普段は社会で何も評価されていないのに、いきなり『すごいことをやっている』と注目される。自己顕示欲を徐々に満たす中で、行動がエスカレートすると、事件につながる」。

■どうすれば動物虐待は減らせるのか…心理を考える
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