「さぁ、高山…(リングに)上がって来いよ」

 次の瞬間、会場に響く「高山コール」。高山は息子さんに車椅子を押され、リング下に向かうと、レスラーたちの手でロープが外されたリングに担ぎ上げられた。

 リング中央には高山と鈴木みのる。すると鈴木がマイクを握り「1年ぶり、リング、どうだ?」と高山に語り掛ける。すると笑顔を浮かべた高山は「いや~、アツくなるね」。この短くも力強い言葉に会場は沸きたった。

 さらに鈴木は「去年の続きはまだ続行中なんだよ。まだ試合中なんだよ。だから今日はちょっと形を変えようと思ってよ。いつも、俺が見てる風景。一緒に見ようよ」と続けると会場に“高山コール”を要求し、大歓声が響く会場の東西南北に車椅子を向け、360度、会場のファンの声援を高山に浴びせて見せた。

 ぐるっと一周、その風景を目に焼き付けた高山に対して再びマイクを握った鈴木は「どうだ、よわっただろ?」と少し意地悪な投げかけ。昨年は涙を流す一幕も見られた高山だったが…「いやぁ…去年よりちょっとだけ強くなって、もう泣かなくなったよ、俺は」と会場を沸かせた。

 絶妙な切り返しに鈴木も高山も笑顔。すると鈴木が「お前の涙は、お前が立ち上がって、俺に負けた時に、悔しいって泣くまで取っておけ!」と言い放ったが、高山も負けじと「いや、立ち上がって、鈴木みのるをブチのめして、嬉し泣きしたいね」と巧みな返しで鈴木を苦笑させる。しかしそこは鈴木だ。「返り討ちにしてやる」と黙ってはいなかった。

 そんな二人のやり取りに会場は再び沸き、ファンからは「親友しかできない会話」「いい笑顔だ」「最高のエール交換」「コメントの頭の良さが復活してる」「舌戦できるやん」「こんなん泣くでしょ」「2人とも素晴らしい」といった反響が相次いで寄せられた。

 なお“続行中”と鈴木が発した経緯について、昨年行われた「TAKAYAMANIA EMPIRE 3」のリングで両者による時間無制限一本勝負のゴングが打ち鳴らされた。車椅子に座る高山に対して、ゆっくりと歩み寄った鈴木は「来いよ!」「やってみろよ!」「来いよ、この野郎」と涙ながらに挑発を繰り返した。これに対して、高山は表情を歪めながら、何度も上体を起こそうと試みたが、起こすことはできず。万雷の「高山コール」が鳴り響くなか、鈴木が「立てねぇのか、立てねぇのかよ、立って来いよ!」と更なる挑発。「お前が立てねぇんならよ…この勝負、お預けにしてやるよ」と一言。その瞬間、高山の左頬を一筋の涙が流れ落ち、両者の戦いはノーコンテストとなっていた。

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