■マーケットの動きに反応して生まれる新大学・新学部
文科省「大学設置・学校法人審議会」は8月29日、2026年度に新設される大学3校を認可した。コー・イノベーション大学(岐阜・飛騨市)、大阪医療大学(大阪市)、武雄アジア大学(佐賀・武雄市)だ。Xでは「大学全入時代にまだ新しい大学を作ってる」「今ある大学ですら学生いなくて経営破綻してるのに」といった反応が出ている。
全国の大学事情に詳しい作家の西岡壱誠氏は、「昔から『経済を学びたい』という受験生が、東大の経済学部は断念して、2番手、3番手の地方大学に行くケースは多かった」と振り返りつつ、最近の流れとして「『福井県立大学でしか“恐竜学部”で学べない』などの理由で、大学に愛着が湧くことが増えた。経済学部のような“他校でも見る学部”が減り、『ここでしか学べない』が重要視されている」と解説する。
最近では横文字の学部名も増えている。武蔵野大学の“アントレプレナーシップ学部”を引き合いに出し、「他の学部にもいい影響を与える。起業家精神を学ぶ学生と、他学部の学生が、学食で『ちょっと企業に興味あるんだけど』と話すなど、全体としての盛り上がりが起きる」と語った。
武蔵野大学では、2021年に起業家精神を育む「アントレプレナーシップ学部」を開設し、2024年にはウェルビーイングデザインをする人材を育成する「ウェルビーイング学部」を開設。2026年には、ビッグデータの活用人材を育成する国際データサイエンス学部(通信教育部)を設置する構想を進めている。
武蔵野大学の小西聖子学長は、「大学のブランドステートメントが『世界の幸せをカタチにする。』で、そのためのアクションとしてウェルビーイング学が合った。仏教系の大学のため、哲学や宗教学の先生は自前でいる。心理学や福祉、医療、環境の先生もまとめつつ、ウェルビーイングの第一人者と言われる先生に、学部長として来てもらった」といいつつ、“世界初の学部”であるため「やっぱり宣伝になる」と笑う。
東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授で、作家・編集者の柳瀬博一氏は、「日本ではマーケットが動いた瞬間に、その少し先にある学部を作る流れがあった。最初は“国際”で、立命館アジア太平洋大学と国際教養大学を皮切りに、各大学も国際関係学部を作った。一方で、有名大学の外国語学部は、人気や偏差値を落とした」と説明する。
こうした経緯を踏まえつつ、「一橋大学が70年ぶりの新設学部として『ソーシャル・データサイエンス』を開設した。大学はマーケットを見ないといけない。学生たちはテクノロジーとコミュニケーションをベースに、どんどん変化していく。インターネットが出てきてから、大学はそうした動きをキャッチアップする必要が出てきた」と話す。
■止まらない少子化…大学の生き残り策は?
