■東京23区だけ、なぜ高い?

火葬場の運営主体は区市町村
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 火葬場の運営主体は区市町村だ。厚生省通達によると、墓地埋葬法に基づき、火葬場の経営主体は原則、区市町村などの地方自治体となっており、全国の97%は自治体などが運営している。墓地埋葬法では「火葬は火葬場以外の施設で行ってはならない」「埋葬、火葬又は改葬を行う際は、市町村長の許可が必要」などと規定されている。

 値上げの理由について、東京博善に取材したところ、「安定的に火葬事業を継続させるために必要」との回答を得た。火葬場は「公益性・永続性・非営利性」が必要であるが、燃料費や修繕費用、人件費の高騰に対応したという。なお、こうした費用が低減傾向となれば値下げも検討するとした。

 シニア生活文化研究所・代表理事の小谷みどり氏は、「火葬は公営で行うべき」との立場だ。「火葬は誰もが一度は利用するため、公共サービスであるべきだ。しかし東京都は戦後80年間、民間に丸投げして、怠慢で何もしなかった。早急に動くべきだが、法改正を国に求めるのは時間がかかるため、まず都がやるべきことをすぐやって欲しい」。

 東京都葬祭業協同組合の理事長で、自身も葬祭業を営む鳥居充氏は「権限が基礎自治体にあるため、まず東京都に戻すべきだ。そのために小池百合子都知事が動くのであれば、好意的に受け止めたい。国の前に都がやれることがあるはずだとの意見は、その通りだ」と語る。

 自治体による運営の例として、「府中市は公営火葬場が無料だ。府中市には民営もあり、こちらは9万円だが、選択肢がある。無料の市民斎場を使いたい人はそちらを使い、火葬待ちでお金を出しても早く火葬したい人は民間を使えば良い。府中市では民営と公営が共存共栄している」と説明する。

 23区に目を移すと「火葬待ちは発生していない。これは民間火葬場が効率化を図り、1日に火葬できる台数も多いためだ」という。これに小谷氏は「23区内では『1週間待った』という人も多く、『火葬待ちがない』と言われると驚かれる。人気の時間枠はいっぱいだが、朝一番や夜の最後は比較的待たずに済むということだ」と補足する。

 近畿大学 情報学研究所 所長の夏野剛氏は、「火葬が義務づけられているのであれば、料金規制を入れるべきだ。日本は1990年代まで、電話もガスも電気も、規制された料金体系だったが、自由化によって競争しないで、もうけられるようになった。ガスや電気は『適切な報酬水準以上に儲けないで』と経産省が指導していたが、そういうことをやらないとダメではないか」と考える。

 これに鳥居氏は「その通りだ。事実上の決まりがあるのに、公営サービスを十分に提供していないのは、東京都の怠慢だ」と返す。

■公営化すれば価格高騰は止められる?
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