アルプスの絶景を望むこのレストランは、オーナーシェフのクリストフ・ビローさん(44)が営むオーベルジュ(宿泊施設を備えたレストラン)「カンテサンス」だ。妻のポリーヌさん(42)と、長女・クレモンティーヌさん(16)、次女・カプシーヌさん(12)の家族4人で、ここに住みながらレストランを経営している。
クリストフさんは以前、車で30分ほど離れた小さな町でレストランを営んでいたが、「借りていた店だったからやりたいようにできなかった」という。車でこの場所を通った際、ポリーヌさんと冗談で「ここはいつか僕たちのものになる」と話していた古い山小屋が、8年後に売りに出た。その頃にはミシュランの一つ星を獲得していたことで、銀行の融資を受けることができ、念願の購入。2016年末にカンテサンスをオープンした。
登山客用のボロボロだった山小屋を、家族や友人の助けを借りて4カ月で改装したクリストフさん一家。最もこだわったのは、客室とレストランだ。車で来店した人もお酒を楽しめるよう、2階と3階は客室(7室)に。家族が暮らす場所は、増築したレストランホールの下の地面を掘って作った。
「優先すべきは何よりもお客様。お客様が来ないと店も続けられないからね。だから、お客様を最高の状態で迎えないとダメなんだ」(クリストフさん)
このお客様ファーストの哲学と、山で採れる旬のハーブやキノコなどの自然の食材を生かした料理が評判となり、2025年3月、カンテサンスはミシュランの一つ星を獲得した。クリストフさんは「本当にうれしかった。自分への評価であると同時に、家族みんなへの評価でもあったから」と喜びを噛み締める。
父親の一言から全員が涙…?
