■株価は高騰、為替は円安 何が起きている?

高市トレード
拡大する

 債券市場では“高市トレード”の動きがある。高市新総裁誕生後、財政拡張への懸念から、長期・超長期国債が売られ金利が上昇。住宅ローン金利などに影響を与え、10年債利回りは一時1.7%超え(17年ぶり高水準)、30年債利回りは一時3.34%(過去最高水準)となった。

 内閣府で経済財政分析を担当した経歴を持つ、第一生命経済研究所主席エコノミストの藤代宏一氏は、「高市氏は金融緩和論者で、少なくとも昨年の総裁選までは、日銀の利上げを批判してきた。しかし今年に入り、とくに総裁選が近くなってからは、日銀の金融政策に言及しなくなった。スタンスは変わっているのだろうが、一度付いた強烈なイメージから、総裁選後に円安が進むのは自然だ」と分析する。

 一方で、アメリカに目を向けると、「積極的な利下げが織り込まれている」という。「来年後半にかけて、いま4%超の政策金利が、3%程度まで下がる見通しだ。しかしアメリカでインフレがぶり返すと、あまり利下げにならず、ドル高が進む可能性がある。そこで高市氏が日銀に注文を付けると、1ドル160円超えもあり得る」。ドル円以外の為替についても、「ドルに対してどう動くかが圧倒的に重要だ。まずは日米関係を考える必要がある」とした。

 高市氏の経済政策のスタンスとしては、「従来から“財政システムの拡大”を積極的に訴えてきた。今回は具体的な指標として、政府の純債務残高対GDPの引き下げを掲げている」と説明する。「表面的には『財政健全化に取り組む』と言っているが、純債務残高対GDPで見ると、日本の財政は2008年のリーマンショック直後程度まで改善している。裏を返すと、『財政支出は結構できる』という含意があるのではないか」。

 高市の後ろ盾には、財務大臣を戦後最長の期間務めた麻生太郎副総裁がいる。その影響については、「バランス重視だろう。高市氏と似たような性格の財務大臣になると、国債や円の信認の話に発展する。特定の誰とは言えないが、穏健な人物が財務大臣になると、仕上がりは良くなるのではないか」と予想する。

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