母はシングルマザーで仕事に追われ、主に祖母に育てられていたというてんてんさん。ところが、20歳の時に最愛の祖母が自殺してしまう。「泣いてない、は嘘なんですけど、何も考えられなかった。感情がない、無に近い」というほど大きなショックを受け、「生きる意味…やりたいことがなかった」「30歳までに死のうと思った」と絶望の淵に立った。

 てんてんさんは「タトゥーを増やすことが生きる活力になっていった。彫ることによって生きる」とタトゥーに依存するように。普通の人なら痛みで絶叫するような際どい部分にタトゥーを入れても「痛いって思わなかった。感情がなさすぎて」というほど感覚が麻痺。彫り師には「マネキンに彫ってる感じ」と言われたという。

 そんなてんてんさんを救ったのは、常連だったタトゥースタジオの店長。店長は「ちょっと彫ってみろ」と自分の弟子の体をてんてんさんにいきなり彫らせた。

 店長は「いいじゃん!こことか丁寧にできてるじゃん!」と仕上がりを絶賛。てんてんさんは「初めて褒められた」「初めてできた。やりたいことが」と人生に希望を持つように。

 現在も同じ店で一緒に働く店長は「空っぽだったんです」と昔のてんてんさんを回顧。「喜んでた。初めてニヤッとして。仕事はマメだし真面目。周りに悪い大人しかいなかったんだね」とてんてんさんの変化に目を細めた。