■中国をどうやって抑止する?
ロシアの脅威については、「ウクライナに侵攻すれば、NATOと対決しなければならない。NATOの軍事力は計算していただろうが、それでも侵攻したのは『自分たちは負けない』と考えたからだ。核兵器で圧倒的に有利なロシアが、通常戦力と核戦力を合わせて考えたときに、『NATOには負けない』と判断したのだろう」と考察する。
その上で、「我々は中国に勝たなくていいが、負けない体制づくりが重要になる。仮に中国が侵略を始めても、中国が受け入れがたい損害を与えられれば、おそらく抑止力は効く。そこに集中して投資することが大事だ」とした。
立憲民主党前代表の泉健太衆院議員は、NATOとアジア地域の違いを指摘する。「NATOは各国の同盟で考えられる。一方で日本は、韓国やフィリピンとの連携について、アメリカを通じて行う必要があり、日本自身が防衛力を高めないと不安が多い。中国の抑止は、日米だけでは無理が来ている。同盟関係でなくても各国と連携し、中国を暴発させない環境づくりをしている」。
村野氏は「アメリカは今、ロシアと中国に同時に対処できない。どちらかと全力で戦えば勝てるだろうが、アメリカ側は無傷で終わらない。いったん片方と戦えば、“第2ラウンド”の余力がなくなるため、両国に強く出られないだろうというのが、アメリカの戦略コミュニティーで『最大の問題だ』と言われている。その不足部分を同盟国の努力で補うべく議論が進められている」と説明する。
中国に“負けない”ためには、どのような対策を取れるのか。小谷氏によると、「中国に『これ以上戦争を続けるのは厳しい』と思わせることが大事だ。『日本に船を送り込むたびに、潜水艦に沈められる』『ミサイルを打ち込んでも迎撃される』『国際社会の経済制裁に耐えられない』など、非対称的な方法で『戦争を続けることは得にならない』と思わせるしかない」のだそうだ。
中国に経済制裁することで、日本へのリスクも懸念されるが、「中国に依存しなくても、一定の経済活動が維持できるようにする。“経済安全保障”には時間がかかるが、これまで本気でやってこなかった。今は日米中心でやろうとしている段階だ」と語る。
日中間では経済的な交流が盛んだが、村野氏は「第1次世界大戦も、ヨーロッパ各国に経済交流があった中で起きた。現代では経済と安全保障の分野が連接してきているが、台湾のように両国が譲れない利益で、より緊張が高まるとなれば、最終的に経済的利益を無視して、戦争になるリスクは排除できない」との見立てを示す。
習近平国家主席との関係性について、小谷氏は「トランプ氏もそうだが、国際政治は力がすべて。力がある者が、自分のやりたいようにやるのが大前提だ」と話す。「第2次世界大戦以降、アメリカが『国際法が大事だ』と言ってきたので、各国も同意してきた。しかし、そのアメリカが事実上、『力がすべてだ』と言っている。中国に対しても、力を持っていないと対等には向き合えない。そういう意味で、同盟関係をしっかり持つことが大切だ」。
(『ABEMA Prime』より)

