「古いものにキラキラしたものをまぶしただけ」
では、日本の場合はどうだろうか。男女共同参画局がライフコースの希望を分析したところ、結婚、育児と仕事の両立を望む女性の割合が最も高くなったという。家庭と仕事の両立はしたいけれど、重くのしかかる負担にモヤモヤする現実。日本も欧米のトラッド・ワイフ旋風に追従する時代がやってくるのだろうか。
昔ながらの「専業主婦」風な生き方を美化する“トラッド・ワイフ”現象を瀧波氏はこう語る。
「言葉は新しいが、要は専業主婦のリブランディングということだ。そういう50年代の時のファッションを引っ張ってきて、日本でいうレトロなファッションが再評価されるような感じで、キラキラにコーティングして発信している。その発信しているインフルエンサーの人たちは、厳密に考えたらトラッド・ワイフではない。発信することで、もしかしたら何か利益を得たり、トラッド・ワイフを副業にしている人ではないか」
「もしこれを見て憧れてやるとしても、夫がすごく稼いでいて、時間の余裕がある人じゃないとできない。だったら自分は選べないじゃんって思う。結婚相手の経済状況、子どもの数などの生活スタイル。親の介護とかもあったら、もうやっていられない」
男性が外で働く、女性が家を守るという“トラッド・ワイフ”式の性別による役割分担については…。
「トラッド・ワイフは、女性だけに限定する必要はない。ニューハズバンドのように男性が主夫をするコンセプトであってもおかしくないはず。なので、隠されているのは、家父長制への回帰。それにキラキラをまぶすことで見えにくくしていて、結局、男性が働いて、女性が家庭に入って、妻は夫に従うものという価値観をそのまま持ってきているだけだから、新しいと言われても、古いものにキラキラしたものをまぶしただけと思ってしまう。実際、専業主婦をやっている人は今も昔も変わらずいるのを、キラキラにすることで新しく見せているだけ。ほとんどの人は、普段子育てと家事をやっていたら、あれ(優雅な暮らしぶり)をやっている余裕はないのでは」
(『わたしとニュース』より)
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