■「対抗措置は取らないほうがいい」
今回のような制裁に、日本としてはどう向き合えばいいのか。廣瀬氏は「政府は対抗措置を取らないほうがいい。こちらが強く出ると、またやり返される。ここは大人な対応で、出てしまったものとして扱ったほうがいい」と考えている。
ロシア側は「経済制裁が解除されれば、エネルギーもあるため、すぐに国際社会に復帰できる」という自信を持っているとして、「戦争終結の条件として、プーチン大統領は制裁解除を強く出すだろう。モスクワ中心部に、六本木のような一流ブランドが並ぶエリアがあるが、そこは賃料を払いながら営業していない状態だ。戦争後を狙って、ドル箱であるモスクワからの撤退を損だと考えている」と予想する。
情報収集面においては、「ロシアの研究者と直接オンラインで話を聞ける機会はあるが、いつまで続くかわからない。ロシアの研究者も、現地の抑圧により、話すことがおそろしくなっている」として、「ロシアとの隔絶を恐れている」と説明した。
外交面では、日中関係も無関係ではない。11月7日に高市氏が「台湾有事は存立危機事態になり得る」と発言したことをきっかけに、中国側の怒りは増している。13日に中国外務省が撤回削除を求めるも、高市氏は譲歩しなかった。18日に毛寧報道局長が「根本的な原因は高市早苗総理にある」と、改めて発言の撤回を要求したが、茂木敏充外務大臣は「撤回する必要はない」とした。
中国の対抗措置による影響は、民間にも出つつある。G20サミットで「日中首脳会談の予定はない」と異例の予告がされたほか、21日に広島市で予定されていた日中友好行事が中止となった。日中両国の相互理解を深めることを目的に、2005年から続いていた「東京−北京フォーラム」も延期され、日本への「旅行の自粛」や「留学の検討」を呼びかける事態になっている。
上村氏は「台湾で事業をしているが、中国ではしていない」としながら、「中国から定期的に仕入れているサプライヤーに『うちの総理、言い過ぎてごめんね』と冗談を言ったら、笑っていた。『だけど大阪総領事は言い過ぎだ』とも伝えた。我々は携わっていないが、飲食や観光には、中期的に影響が出るのではないか」との感想を述べた。
廣瀬氏は「向こうの要求をそのままのむと、日本が甘く見られる状況が続く」と予測する。「中国のスタンスをロシアが側面支援している状況がある。今回の問題は、歴史認識が根底にある。ロシアは近年、中国を支えてプロパガンダを流しているが、この波が東アジア全体に広がると厄介だ。それを避けつつ日本のスタンスを維持することが重要だ」。
(『ABEMA Prime』より)
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