
11月24日から開かれる国際会議で、ウナギの取引規制の強化が議論されます。さらなる価格の上昇が心配されるなか、格安ウナギを生み出す“革新技術”に迫ります。
【画像】、従来の10倍の赤ちゃんウナギの飼育が可能 特許を取得した水槽
1匹1000円?「夢のウナギ」へ挑戦
日本人が愛してやまないウナギのかば焼き。しかし、不安定な漁獲高や、取引規制の強化など、食卓から姿を消すのでは?そんな懸念もあるなか…。
水産研究・教育機構 風藤行紀さん
「1匹あたり1000円を切ることを目指す」
ウナギが…1000円!?その切り札が、国内でウナギを生み出す「完全養殖」です。
研究者が追い続けた未来図がすぐそこに。ウナギ技術の最前線に迫りました。
伊豆半島の最南端・石廊崎にある水産研究教育機構。2010年には世界初となる完全養殖を成功させたこの施設。2017年には上皇ご夫妻も視察に訪れるなど、数十年に渡りウナギの完全養殖を研究してきました。
ただ…。
風藤さん
「たくさん作るのが難しいので、(完全養殖のウナギは)なかなか市場に出ない」
そもそも、ウナギの養殖は、海外からウナギの子ども「シラスウナギ」を仕入れ、飼育、出荷するのが一般的です。
一方、完全養殖は、親ウナギから卵を採取し孵化(ふか)させ、赤ちゃんウナギを再び親ウナギまで育てる、完全サイクルの養殖。これが商業化されれば、中国からの輸入に頼る「シラスウナギ」を使わず国内でお手頃なウナギを安定的に供給することが可能となるのです。
しかし、完全養殖の成功から15年経った今でも、親ウナギまで育つ割合は10%程度。その大きな理由が…。
風藤さん
「こちらがまだ産まれて20日くらい。小さい黒い点が目ですね。生まれたばかりだと7ミリとかですね」
自然界のウナギの赤ちゃんは、マリアナ海溝付近で生まれ、黒潮に乗って日本に向かう最中にシラスウナギへと成長します。
シラスウナギを飼育し成長させるのは難しくないのですが、問題はその前、赤ちゃんからシラスウナギに成長するまでの「期間」です。
風藤さん
「マグロは『赤ちゃん』の時期が1カ月もない。ウナギの場合は250日とか300日。仔(し)魚(赤ちゃんウナギ)の期間が長いので、死にやすかったりケアが難しい」
そのため、衛生面を徹底的に配慮。1日5回ある餌(えさ)やりの度に、濁った水をすべて抜き、水槽を掃除する必要がありました。
その作業効率から、小さな水槽を使うため、市場に流通させるほどの大量生産が困難だったのです。
それが今、大きく変わろうとしています。
今年7月に特許を取得した新型の水槽。特徴は「2つの水槽」が平行に置かれていること。
餌を食べ終えたら、水流を発生させ向かいの水槽に。このパイプを通ることで、赤ちゃんウナギを傷つけず移動させることが可能。空になった水槽を掃除。これを交互に繰り返します。
掃除作業の効率化で水槽のサイズも大きくなり、従来の10倍となる赤ちゃんウナギの飼育が可能となったのです。
風藤さん
「できれば来年くらいには、試験で販売する形を目指しています。1匹あたり1000円を切るくらいを目途にがんばっています」
「完全養殖」へ 異業種から参入
こうした取り組みは民間にも広がっています。
埼玉県に新たに作られたウナギの養殖場。
武州ガス 新規事業チーム
大河原宏真さん
「この水槽に約5000匹くらい」
運営しているのは、埼玉県川越市に本社を構えるガス事業者です。
大河原さん
「エネルギーで地域貢献をしてきたつもりですが、今後は食事業でも皆様に貢献したい」
地元・川越の名物でもあるウナギ文化を盛り上げるため、新規参入。3年前から「一般的」なウナギ養殖を開始しました。
地産地消にこだわる、地元のイタリアンレストランに卸したり、かば焼き加工したウナギをネット販売。主力商品の「武州ウナギ」です。
味は間違いなし!ただ、1匹2900円と、やはりウナギは高級品。そこで去年から、完全養殖を成功させている国立研究施設から技術提供を受け、量産への挑戦を始めたのです。
大河原さん
「完全養殖ができないかと埼玉でチャレンジ」
お手頃なウナギの安定供給を実現する完全養殖。その味を楽しめる日は近づいています。
(「グッド!モーニング」2025年11月23日放送分より)
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