■過去にも度々、日中関係は悪化
日中関係は以前から度々悪化している。2005年には歴史教科書問題が発生し、中国で反日感情が高まった結果、大規模デモや日本製品のボイコットに発展した。2010年には尖閣諸島沖の日本の領海で、中国の漁船が海上保安庁の巡視船に衝突し、漁船の船長が逮捕された。その際にも各地で反日デモが起きたほか、レアアースの輸出も停止されている。
2012年に日本が尖閣列島の国有化を宣言すると、中国国内での抗議デモに加え、日中間でのイベント中止や日本への渡航自粛要請が出された。そして今回の高市総理の発言でも、渡航自粛要請や、日本産水産物の輸入停止措置が取られている。
こうした対立が起きた際に、日本政府は中国にどう向き合ってきたのか。元外交官で、キヤノングローバル戦略研究所の特別顧問・宮家邦彦氏は
中国共産党にはトリセツがあるという。
<中国共産党のトリセツ>
(1)「台湾と抗日」は最重要問題なので安易に妥協しない
(2)メンツが潰れれば制御不能となり、論理が通用しない
(3)激高した後、われに返るまでには相当の時間が必要
(4)その間、中国側の不利益につき熟考させることが肝要
(5)妥協するにもメンツの保持が必要なので、面倒である
順を追って説明する。「台湾と抗日は中国共産党の1丁目1番地で譲歩できない。メンツは公開の場での批判を非常に嫌がり、論理が通用しない。そして怒ると時間がかかり、『このままだと損だ』と不利益を理解して、ようやく譲歩する。しかし妥協を決めても、最後に『俺のメンツは守ってくれ』がある」。なお、いまの日中関係は、(3)が始まったばかりの段階だという。
中国側の反応に関しては、「中国は『内政に介入した』と怒るが、高市総理は『台湾を守る』など一言も言っていない。存立危機事態は、日本の同盟国が攻撃された時に、日本がしかるべき措置を取ること。つまり中国がアメリカを攻撃しない限り起きない。今まで言ってきたことと同じだ」と話す。
また、「アメリカが攻撃され、それが日本の存立に影響ある場合には、必要な措置を取る。ただ中国は『日本がアメリカと一緒に台湾を守る』という発想なのかもしれない」と考察しつつ、中国世論については「それを国民に対して教育・扇動・宣伝している。我々は内政干渉して情報を操るわけにはいかないため仕方ないが、与えている情報はロジックが異なる」と語った。
■巨大国家・中国との落としどころは?
