【WRC 世界ラリー選手権】第14戦 ラリー・サウジアラビア(11月29日/デイ4)
WRC(世界ラリー選手権)今季最終戦の競技最終日デイ4が行われ、ボロボロになった凄惨なマシンで最終SSに臨んだ日本人唯一のWRCドライバー勝田貴元の勇ましい姿が話題となった。
前戦ラリー・ジャパンでは、ホームラリーながらデイリタイアと悔しい結果となったトヨタの勝田は、チームがマニュファクチャラー王者を獲得し、同僚のオジエとエバンスがドライバーズタイトル争いを続けるなか、忸怩たる思いでラリー・サウジアラビアに臨んだ。
WRC初開催となる中東サウジアラビアのステージで、砂漠や山岳路のトリッキーな路面に多くのドライバーが苦しめられるなか、勝田も最終SS17を前にSS16で不運に襲われる。高速の左コーナーで曲がりきれずにコースをはみ出すと、荒れた路面に足を取られてマシンを横転させてしまう。結果、マシンのルーフは潰れ、フロントウインドウも大破。この状態ではもうリタイアすると思わされたが、勝田とコ・ドライバーはヒビが入って前が見えなくなったフロントウインドウを引き剥がすと、足まわりなどに応急措置を施して、そのまま走行を続けた。
迎えた最終SS17、絶対にフィニッシュするという強い覚悟を持ってスタートラインについた勝田のGRヤリスは、フロントガラスがなく、ボディフレームも歪んでいて、サスペンションにもダメージを負っている状態。明らかに異様なその風貌は、鬼気迫るものを感じさせた。さらにフロントガラスがないため、乗員の2人はホコリ除けのゴーグルを装着している。実況の菱沼アナウンサーも思わず「永久保存版になる(シーン)かもしれません」と言葉をこぼしている。まともに走れないマシンの状態ながら、勝田はどのコーナーでも殺気のようなものを放ちながら全開で攻め、異次元の激走を見せ続けた。
走行後のインタビューでは、「非常にタフだったことは否めませんが、これもラリーですね」とコメントを残している。手負いのマシンながら、最終的にパワーステージで5位を獲得した勝田。ラリー・サウジアラビア全体でも総合5位となり、ファンに来季への期待を抱かせている。(ABEMA『WRC 世界ラリー選手権 2025』/(C)WRC)
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