“寿司屋の女将”として「働きながら」合格

「働きながら」合格に必要な時間
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 畠伸子さんは、愛知県知多半島にある寿司屋「ゆたか寿し」を切り盛りする女将。大学卒業後すぐに結婚し、寿司屋の若女将として働き始めたという。夫を最も身近で支える存在として、毎日一緒に店に立ちながら4人の子供を育ててきた畠さん。

 仕事と子育ての両立だけでも大変な中、45歳の時に突然、超難関試験と言われる司法試験を目指した。いったいなぜなのか。

「コロナの時に、ここは田舎なので人口は減っていくし、2人揃って飲食店だけやっていても持たないかもしれないとぼんやり思っていて。しっかり店の借金返すために、私が何かしらお金を生み出す仕事はしなければいけないと思った。どうせなら挑戦して、思いっきり頑張ってみようと思った」(畠さん、以下同)

 コロナ禍の影響でガラガラになった店の宴会場で、通信教材で勉強を開始。店の仕事の傍ら、隙間時間を見つけては勉強に充て、司法試験の受験資格を得るための試験勉強に打ち込むが、その予備試験に2年連続で不合格。大きな壁に跳ね返された畠さんは、次の行動に移った。

「思い切って法科大学院に行かせてもらった。2年コースで入れば、次の年の7月にはもう司法試験受けれる。そこで一発で仕留めるから行かせてほしいと最初からお願いした」

 そこから法科大学院の試験に照準を切り替えて、2024年に合格。入学後は20代の学生たちに囲まれながら勉強に打ち込み、およそ1年半後の今年11月、50歳にして司法試験に見事合格した。

 (株)法学館/伊藤塾の司法試験企画部部長の奈良大輔氏によると、司法試験に「働きながら」合格するには、5000時間と仮定して、平日は2時間・土日で計6時間、正月やお盆等で2週間の長期休暇での勉強を考慮しても5~6年ほどはかかるという。

 これに対し、弁護士の三輪記子氏は「私は受験生10年ぐらいやったので、10年で考えると、5000時間では収まらないぐらいは勉強したと思う。時間はみんな1秒、1時間と平等だが、中身をどれだけ詰められるかというのは人によって多分全然違うと思う」と自身の経験を語った。

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