ほんの一瞬、標的から視線を逸らすように頭を振って“時間差”で飛んでくる戦慄の剛腕フックが相手を一撃で粉砕。荒削りだが野性的な“倒す能力”に識者も「”当て勘”というのは才能」と驚嘆コメントを寄せた。
12月19日、後楽園ホールで開催された「Krush.183」。浜崎瞬太(武道格闘技道場 ∞ø N) と那稀(拳心会)によるKrush初参戦同士の対決は3ラウンド、那稀が終了間際にレフェリーストップによるKO勝ちを収め、デビュー戦を白星で飾った。
1ラウンドから前に出る好戦的な展開。開始数秒でABEMA解説の卜部弘嵩が、那稀の独特な右のパンチについて「頭から入ってくるのでタイミングが少し遅れてフックが飛んでくる。これが得意だったのは昔K-1で活躍していたマーク・ハント」と、レジェンドの“サモアン・フック”に例えて指摘。そして、この“クセの強い”打撃が、試合のポイントとなっていく。その後、浜崎がカーフとヒザで削れば、那稀は右ミドルや左右のフックで応戦。探り合いの中でも互いに力の片鱗を見せ、ラウンドを終えた。
試合が動いたのは2ラウンドだ。中間距離で蹴りとパンチを交錯させ、両者が譲らない流れが続く。浜崎の左ミドル、ヒザ、左ボディにジワジワ押されてロープを背負った那稀だったが、右から左へつなぐ逆ワンツーを振り抜くと浜崎が腰から砕けてダウンを喫した。
3ラウンド、巻き返しを狙う浜崎がバックスピンや首相撲からのヒザで猛攻を仕掛け、両者が激しく殴り合う展開へ。ここで中継では浜崎のある“癖”が指摘される。卜部は「ちょっとアウトが見えづらいな…隙になってますね」と述べ、実況の本田将一郎アナウンサーも「右45度、斜め気味からが見え難いのではと」と補足。そんな実況陣のコメントは、まるで予言のように的中する。
浜崎がコーナーへ追い詰め、左右のフックをまとめた瞬間だった。那稀が相手から視線を逸らすように頭を振り、力強く踏み込みながら右のクロスを一閃。闇雲とも言えるカウンターの“サモアン・フック”が浜崎の顔面を射抜き、足元をふらつかせた浜崎を見てレフェリーが試合を止めた。荒削りながら鮮烈なKO決着に「パワーあるなぁ」「パンチ力で勝ったね」とウェルター級らしい強打を称賛する声が上がり、浜崎の猛攻をしのいで仕留めた展開に「返り討ち」という言葉も躍った。
劣勢をワンパンチで覆した那稀の決定力について、卜部は技術的な精緻さよりも、野生的な勘で“当て切る”スタイルに注目する。「基礎ができているタイプではないけど、打撃のセンスがある。綺麗なボクシングができるわけじゃないけど当て勘を感じる。“当て勘”というのは才能なので」と、理屈を超えた天性の資質を称賛した。
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