東出を最も驚かせたのは、その制作期間と莫大な費用だった。絵師によれば、1枚の仏画を描くのに2日から4日、家全体のプロジェクトとしては2〜3か月もの時間を要するという。そして、気になるその総額について「この家を全部描くのに、おいくらぐらいなんですか?」と東出が尋ねると、「今回は総額45万ニュルタム(約76.5万円)です」とのこと。ブータンの平均年収が約44万7000ニュルタム(約76万円)であることを考えると、まさに年収のすべてを「壁画」に注ぎ込んでいる計算になる。
「絵だけで!? そりゃそうだわなぁ……」と驚愕する東出。しかし、この絵は一度描けば50年はもつという。一生に一度、あるいは数世代に一度、家族の幸福を願って財産を投じるブータン人の価値観を、東出は深く噛み締めていた。
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