
玉川徹氏が鈴木憲和農水大臣に話を聞きました。
【画像】「コメ生産を守りたい」今後の日本の農政について話す鈴木農水大臣
コメ価格 高止まり続く
都内のスーパーに並ぶ新米の価格は税込み4000円超えのものばかり。
60代主婦
「元々は10キロを買えていた値段で今5キロも買えないので、なんでこんなに高くなったのかちょっと理解ができない」
50代夫婦
「高いですね、やっぱり。昔の倍ぐらいしますので、備蓄米があれば買うようにしています」
ベニースーパー 赤津友弥本部長
「昨年と比較いたしますと、2割から3割程度高い感覚。仕入れの原価というものが大幅に上がっている現状の中では、それに見合った価格をつけざるを得ないというのが状況でございます」
26日、農林水産省が発表した、スーパーで販売されたコメの平均価格は5キロあたり4337円で、最高値を更新しました。4000円台は9月以降16週連続です。
コメ価格の高止まりが続き、いまだ収束の兆しが見えない中、今後の農政は一体どうなっていくのでしょうか。
農政再転換「生涯守りたい」
鈴木農水大臣に今後の日本の農政について直撃しました。
玉川氏
「今まで日本のコメ農政に対して僕はずっと疑問を持っていたんですよ。一体何を守りたいのか、農家の数を守りたいのか?日本のコメの生産を守りたいのか?これはどちらが大事なんですか?」
鈴木農水大臣
「これ間違いなく言えるのは、日本のコメ生産を守りたい」
玉川氏
「需要に合わせて生産を決めるっていう話でしたけども、日本の人口がどんどん減少していきます。50年で半減する勢いです。もし需要にあわせて生産をずっと続けていくと、生産がどんどん縮んでいきますよね。それでいいのかっていう思いをずっと持っているんです」
鈴木農水大臣
「まさに今玉川さんがおっしゃっていただいたことが、本当に私は課題だというふうに思っていて。赤いグラフが(コメの)需要なんですよね。赤い線を前提にした需要に応じた生産を私もしたいわけではなくて、私がやらなきゃいけないと思っているのは、この赤い需要という右肩下がりを右肩に上げていく。このことをまずやりたいんです。そうすると需要が大きくなるんだったら、もっと作っていいよね、というところまでやらないと、日本のコメの世界の未来というのは、見えてこないというふうに思っています」
「需要応じた生産」狙いは?
玉川氏
「僕は大臣が代わった時『需要に応じて生産』という話を聞いた時に、正直がっかりしたんですよ。せっかくかかった大号令(増産)が元へ戻るのかと」
猛暑などでコメの生産量が減少したことや、農林水産省の需要見通しの誤りから始まったコメ価格の高騰。この事態を受け、8月、石破政権は農業政策の歴史的な大転換をし、コメを増産することで価格を下げる方針を示しました。
石破茂前総理大臣
「『コメを作るな』ではなく、増産に前向きに取り組める支援に転換をいたします」(8月)
小泉進次郎前農水大臣
「今後は需給の変動に柔軟に対応をできるように増産にかじを切る政策へ移行していきます」(8月)
しかし、10月に就任した鈴木農水大臣は…。
鈴木農水大臣
「マーケットの中で不足感があれば現場で増産をする。そして供給過剰であれば、逆に生産を抑制していく。これが需要に応じた生産だと思います」(10月)
「需要に応じた生産」を基本とする考えを強調する鈴木大臣。これについて「増産方針」から、事実上の「減反政策」に先祖返りしたという指摘もされています。
玉川氏
「これは元(減反政策)へ戻るってことなんですか?」
鈴木農水大臣
「石破政権で、何しろ増産するんだというメッセージ、一瞬いいように思えつつも、現場の皆(農家)さんは何を感じたか。今すぐにこれ需要ないよねと、輸出も含めて。その中で大増産をし続けたら、何が起こるかは明白ですよね。そこに対してすごい不安感があったんですよ」
政府が増産にかじを切っても、需要が増えない中では供給過多になり、最悪の場合、コメ価格の暴落が起きるのではと、コメ生産の現場では不安感が広がったと鈴木大臣は言います。
鈴木農水大臣
「大増産ばっかりじゃなくて需要を作るっていうことが先にあって、初めて私たちの増産はできるんだという姿の方が、ドラスティックな改革ではなくて現場に受け入れられる、これは穏やかな道かなと思っています」
鈴木大臣は、まず「需要創出」を優先し、そのうえで増産を進めることが、現場にも受け入れられる穏やかな道だと強調します。
なぜ?増産方針撤回
その需要創出とは「海外マーケットの開拓」です。
鈴木農水大臣
「海外に出した時に、もちろん価格は日本米の方が今年は間違いなく高いです。高いですが、おにぎりやすしにした時のクオリティーというのは、日本米の方が明らかに良いものができます。そこに価格競争力を求めなくても、チャレンジできる場所がまだまだたくさんあるんじゃないか、ということに、私はチャレンジをしていきたいということなんです」
前政権では、農地の大規模化を進め、生産コストを下げることで、低価格を実現し輸出につなげる方針でした。
小泉前農水大臣
「コストを下げるための一つの手段に、まずは大規模化。そうすればより人手をかけずにできます。農業の場合はコメの生産コストは面積に比例する形で下がってきます」
「それに加えて、新しい農業の、特にコメ作りの現場では、水田ではなくて乾いた田んぼに(種を)まいてコメを作る。乾田直播(かんでんちょくは)っていうんですね」(8月26日放送)
今年7月、小泉前農水大臣が視察したのは、水を張らない、乾いた田んぼに直接、種をまき、芽が出た後も水を張らない節水型乾田直播栽培。
番組でも去年8月、鳥取市で節水型乾田直播を行う農業法人を玉川氏が取材しました。
玉川氏
「コメ作りで最大のポイントとは?」
トゥリーアンドノーフ 徳本修一さん
「一言でいうとコストですね」
従来のコメ作りでは、コメ1キロをつくるための生産費は、全国平均でおよそ264円ですが…。
徳本さん
「1キロは我々換算でだいたい100円を切ってくる。半分以下のコスト」
さらに、種もみの準備から、収穫・管理までの労働時間も従来の田んぼのおよそ5分の1で済むといいます。
玉川氏
「最終的にどれくらいの量を売れるんだって話になるんですけど、これはどう見込んでいるんですか?」
徳本さん
「我々が今このチームで最終的なビジョンで抱えているのは500万トンです」
去年の6月までタスクフォースを率いていた経済産業省から出向している石川県副知事の浅野大介氏に話を聞くと、次のように答えました。
玉川氏
「500万トンという数字はいける数字なんですか?」
浅野氏
「需要はあると思います。コストさえ日本が見合うコストで出せるんだったらば、十分チャンスはあると思っています」(2024年8月22日放送)
価格維持で「海外市場へ」
玉川氏
「今のコストの半分のコストにすれば、十分海外で味じゃない部分(価格)でも競争できるという話を聞いています。(需要に応じた生産で)価格を守ることは、結局日本の農業、コメ農業を強くしないということになっちゃうんじゃないかと思っているんですけど、これはどうですか」
鈴木農水大臣
「おっしゃる指摘はですね、一部正しいんです。ただ、私最初に玉川さんに申し上げたのは、私が守りたいのは、この国の食料生産です」
玉川氏
「そうです」
鈴木農水大臣
「低価格で低コストで大規模でできますよっていう皆さんが、今の時点ですべての農地を、やめた方の分も含めてですね、受け入れていくんだっていうことであれば、一つ今言った方策は、私、現実性が帯びてくるんだと思うんですけど。いい条件ですべてが整っているわけでもない中で、それをやるとですね、条件の悪いところはもう諦めていこうかっていうことにしかならないので、私たちがうまくバランスを取りながら、同時に海外マーケットをもっともっと広げていって、すべて維持をしていく、すべて食料供給を守っていくってことを、とっても難易度が高いことにチャレンジをしていると理解をしています」
玉川氏
「にわとりと卵だと思う。“需要があれば生産する”だけど、ちゃんとコストを下げて安いコメにしない限り海外の需要は生まれない」
「輸出で日本の農業、コメ農業をやっていくんだ、そのために何をするかとかは言えますか?」
鈴木農水大臣
「言えます」
「私の目標は、コメの輸出100万トンです。100万トンまでは、やらなきゃいけないと思っています。自分が政治家として、現役のうちに、そういう高いところまでやりたいと思います。結果、それはこの国の食料供給力を確保するということに必ずつながりますから」
低コスト化を先にして、価格を下げることで500万トンの輸出が可能になるという見方がある一方で、鈴木大臣は、需要を作ることを優先し、価格は維持したままで、輸出を100万トンに増やすとしています。
玉川氏
「生産調整をしている限り、海外に売る分すら出てこないんじゃないか。結局、価格も維持されてしまうので、海外に安く米を売るということもできない。需要も伸びないということになっちゃうと思うんですよね。ここはどうですか?」
鈴木農水大臣
「現状の政策の中では、海外に売る、要するに新規需要の開拓なので、そこに対しては政策上、実は支援をしているんですね。安定的に量が確保できて、それなりの量をちゃんと扱ってくれる事業者の皆さんに、ある種営業に行く、開拓に行くということを、私も含めて、政府が前面に立ってやらせていただきます」
おこめ券 批判殺到に大臣は
物価高対策として、政府が推奨する「おこめ券」については…。
玉川氏
「おこめ券はあんまり良くない政策だったと僕は思うのですけど、どうですか?」
鈴木農水大臣
「まず、ちゃんと申し上げておくと、どういうやり方で、食料品の価格高騰に対して、生活者の負担を和らげるか。これについては、どういうやり方でやるかは、自治体の皆さんがご判断をいただければと思います。私が例えばと言って出した『おこめ券』ですけども」
玉川氏
「でも最初から言ってましたよ。番組に来た時から」
鈴木農水大臣
「今はすでにどこのスーパーでもおコメ屋さんにいっても、十分にコメはあります。問題なのは価格がそれなりの値段がするということなので、その時に何ができるかといえば、負担感を和らげるという意味で、おこめ券というのが私は有効だと思っています」(10月27日放送)
「おこめ券」を巡っては、コメ余りの状況の中、農家を守るためにコメの価格を下支えする狙いがあるのではないか、という指摘もあります。
鈴木農水大臣
「必ずしも、皆さんがすべてコメを買うかどうかということについては、きっとそうじゃないだろうというふうに思いますから、そういう点も含めて考えると、価格への影響というのは、ほぼほぼないと考えております」(12月16日)
一部の自治体ではすでに配布も始まっていますが、全国の多くの自治体でおこめ券の採用が見送られているのが現状です。
鈴木農水大臣
「実際に各世帯の皆さんに、発送が終わって、皆さんがそれを受け取れるという状況まではきています。スピード感ですね。もちろん、さまざまなご指摘があるので、どんなやり方にしても、コストってある程度当然かかってしまうと思うので、本当に最良のやり方でやっていただければというふうに思います」
玉川氏
「これもしかしたらおこめ券じゃなくて、商品券ですよと。もちろん、コメも買えますよということだったら、こういう話になっていなかったんじゃないかなと思うのですけど、いわゆるメディアの批判とかも含めて」
鈴木農水大臣
「さまざまなご意見については、本当に真摯に私は受け止めたいと思っています」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年12月29日放送分より)
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