南海トラフ巨大地震 津波警報「3分以内」と耐震化・早期避難
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 巨大地震のリスクが高まるなか、「いざ」という瞬間に何を知っておくべきなのか…南海トラフ地震をはじめ、日本列島を襲う大地震と津波に、私たちはどう備えれば良いのでしょうか。最新の観測網や津波シミュレーション、そして命を守るための具体的な行動について、専門家の話から考えます。

【画像】南海トラフだけじゃない “地震大国ニッポン”で命を守るポイント

日本はなぜ「地震大国」なのか

2025年はこの地震を含め、震度5弱以上の地震が15回
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 12月8日、青森県八戸市で震度6強を観測する地震がありました。2025年はこの地震を含め、震度5弱以上の地震が15回起きました。

 震度1までを含めると、その数はなんと4000回を超えます。まさに、地震大国・ニッポンと言える状況です。

「震度7」の地震は、1995年以降、7回発生
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 最も大きい震度「震度7」の地震は、1995年以降、7回発生しています。

 能登半島地震からちょうど2年となるこの節目のタイミングに、改めて防災について考える時間を作りましょう。

 今回は東京大学名誉教授の平田直さんに、地震の基礎の基礎から話を聞きます。

地震の基礎から話を聞く
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武隈光希アナウンサー
「日本は、やはり地震は多い?」

平田さん
「多いですね。地球上で地震はまんべんなく起きているわけではない。特定の場所でしか起きていない。一番重要なのは、太平洋を取り囲むように帯状に地震は起きている。地震が多い場所というのは、実は火山も多い。地震と火山は兄弟みたいなもの。英語で言うと『Ring of Fire(火の環)』。そういう所に、私たちは住んでいる。認識して、いろいろなことに備えなければいけない」

画像の赤い点が、地震の分布
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 画像の赤い点が、世界中で起きている地震の分布です。

 実は、世界中で観測される大地震の2割が、日本とその近海で発生しています。発生原因は、プレートとプレートのぶつかり合いです。

地球上で一番大きい「太平洋プレート」
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平田さん
「海底のさらにその下を地震プレートというんですけれども、地球上を覆う十数枚の岩盤の塊があります。太平洋プレートというのは、地球上で一番大きいプレートです。その太平洋プレートがアジア大陸のほうにギュウギュウ押していることが、地震が起きる一つの重要な要素です」

大きな力は、プレートとプレートの境界部で発生
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 その大きな力は、プレートとプレートの境界部で発生します。日本はその境界部に位置していることもあり、地震が多いのです。だからこそ、地震の発生を事前に捉えたいところですが…。

地震予知はできないが…
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武隈アナ
「地震の予知は、できるものなんですか?」

平田さん
「防災上の情報としては、地震の予知はできません。緊急地震速報を出す地震計というのは1000数カ所ある」

武隈アナ
「そんなにあるんですね」

平田さん
「どこかで地震が発生すると、出る波をなるべく早く検知して、一番地震に近いところで観測されたその地震計のデータから、どこでどのくらいの大きさの地震があるかを即座に判断する。まだ揺れていない、遠い場所の揺れがあと何秒後に、どれくらいの大きさかを予測」

「揺れは大きいが、遅く伝わるS波」と「揺れは少ないが、速く伝わるP波」をキャッチして…
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 一般に広く「緊急地震速報」の情報が出るようになったのは2007年から。その仕組みを具体的に説明します。

 地震が発生すると、「揺れは大きいが、遅く伝わるS波」と「揺れは少ないが、速く伝わるP波」という2つの波が出ます。

 これらの波を地震計でキャッチし、秒速30万キロの電波で先回りして、揺れの大きなS波がまだ揺れていない場所に到達する前に、緊急地震速報を出すのです。

 高速で走る新幹線などの列車は、この情報を受け、自動的にブレーキを掛けて速度を落とし、脱線を防ぐことができています。

津波警報と最新観測網…「3分以内」の裏側

事前に計算してデータベース化
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 地震に続き、心配なのが「津波」です。

武隈アナ
「津波警報は、どのように出しているのですか?」

平田さん
「津波はどうして起こるかというと、地震が起きると海底が盛り上がったり下がったりする。実は、それにつられて海面が上がったり下がったりする。気象庁はあらかじめ、どこでどのくらいの大きさの地震があれば、どの場所に、何分後に津波がどのぐらいの高さになるかをスーパーコンピューターでたくさん計算して、それをデータベース化している」

武隈アナ
「事前に計算したものが出ているわけですね」

平田さん
「そうです」

 12月8日の青森地震の際も、約2分で津波注意報が発表されたように、地震が起きた際、基本的に3分以内に津波情報が入るのは、こういった理由からなのです。

日本の太平洋側を広くカバーする観測網が完成
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 さらに、発生した津波の観測システムも整いつつあります。

 日本海溝沿いの地震に備える「S-net」。南海トラフ地震想定域の東側をカバーする「DONET」。さらに今年9月からは想定域の西にも、高知から日向灘の海底に「N-net」を追加。これにより、従来よりも最大20分早く津波が観測できるようになったのです。これで日本の太平洋側を広くカバーする観測網が完成しました。

南海トラフ巨大地震の新想定
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 そして、その南海トラフ巨大地震に関しては、2025年3月、内閣府から被害想定が発表されました。死者数は最大29万8000人と想定しています。

 また、各都市の津波高の最大値も発表されました。高知県の黒潮町や土佐清水市では、最大約34メートルの津波到達が想定されるということです。

武隈アナ
「津波発生時に私たちが頭に入れておいたほうがいいことはありますか?」

平田さん
「海岸やビーチで30センチの津波が来たら、大人でも動けなくなる。津波の高さが1メートルになると、命を失う可能性が高い。致死率100%という計算をしている。2011年の東日本大震災の時には、震源で3分間エネルギーを出し続けました。これは例外的に大きいが、マグニチュード8ぐらいの大地震は1分以上強く揺れる。直ちに少しでも高い所へ逃げる」

30センチの津波を体験
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 実際に荒井アナウンサーが30センチの津波を体験した時の様子です。「縮流」といって、ビルとビルの合間など狭い場所を通過し、より勢いを増したものを再現したものです。

荒井理咲子アナウンサー
「穴から水が出てきました。流されますね。かなり強い力です」

 ひもに捕まっていても、1メートルほど流されてしまうほどの勢いです。

津波の恐ろしさを実感
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荒井アナ
「こんなにも太刀打ちできないんだと実感しました」

中央大学理工学部 都市環境学科 有川太郎教授
「高さは30センチくらいで、大体50~60キロくらいの力がかかる。本来なら、あれがずっと長く続くわけです」

耐震化と早期避難…私たちにできる2つの備え

 それでは最後に、防災・減災のために我々がすべきこととは…。

私たちにできる2つの備え
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平田さん
「あえて2つだけ言うならば、1つ目は耐震化。そして2つ目は、すぐに逃げる、早期避難」

 まずは耐震化からです。多くの建物が軒並み潰れてしまった去年の能登半島地震で、分かったことがあります。

平田さん
「耐震基準は大地震で被害が出るたびに、だんだん強化されてきました。その改正で一番重要なのが、1981年(昭和56年)の改正。奥能登の市町村約半分の家は、1981年耐震基準を満たしていない旧耐震だったということも分かっています。多くの方が、家が倒れる、潰れることで亡くなってしまった。きちんとした耐震化がされていなかった」

 1995年の阪神・淡路大震災を受け、2000年にも耐震基準はもう一度改正されています。

平田さん
「能登半島の木造家屋の6割は被害を受けている。2000年基準を満たしている建物はほとんど被害を受けていない。お年寄りは『自分は老い先長くないから、耐震化しない』なんて思わないで、家族が訪ねてくるんだから、その時に地震があっても大丈夫なように、きちんと耐震化をすることは重要」

 そして、もう一つは「早期避難」です。

平田さん
「もし、南海トラフでマグニチュード9の地震が起きると、一番重要なのは津波被害。何もしないと21万5000人が津波で亡くなる。全体の被害想定29万8000人のうち21万5000人、4分の3ぐらいが津波で亡くなる。津波でなくならないようにするにはどうしたら良いかというと、揺れよりは津波のほうがちょっと遅いので、時間的猶予があるから、大津波が来る前にすぐ高台に逃げる。どこに逃げる、どの経路で逃げる、誰と逃げる、何を持って逃げるかを普段から考えておいて、早期避難をみんながすれば、津波の被害は3分の1から5分の1に減らせる」

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