■ベネズエラはなぜ経済破綻した?
『ベネズエラ−溶解する民主主義、破綻する経済』などの著書があるアジア経済研究所 主任研究員の坂口安紀氏は、「ベネズエラでは1958年以降、30〜40年にわたり、二大政党制による公平な選挙が行われていた。1810〜1820年代に独立した南米諸国は、アフリカやアジア諸国のような独立後の歴史が短い国より、民主主義が根付いている。中でもベネズエラは特にそうだった」と、歴史をなぞる。
マドゥロ氏の前任は、2013年に病死したチャベス前大統領だ。「チャベス政権時代は石油価格が高く、海外、特に中国から大量の資金も借りられたため、バラマキができて支持率も高かった。ただ当時借りた対外債務の支払いなどが、国家経済をゆがめ、ボロボロにした。しかし、国民負担が増えたのはマドゥロ政権下だったため、『マドゥロが悪い』と支持率が下がった」。
経済状況については「13万%のハイパーインフレが起き、2014年からの7年間でGDP(国内総生産)も5分の1に縮小した。食べるものも薬もなく、赤ちゃんや子どもが命を落とす。ゴミ収集車に子どもが集まり、ゴミを食べる。いままで想像できなかったことが起きている」と説明する。
このような現実もあり、「マドゥロ氏の支持率は低いが、抗議しようにも弾圧がひどい」とする。「2024年7月の大統領選で負けたが、それを認めず『勝った』と主張し、政府派が支配する選挙管理委員会も発表した。市民が抗議したが、わずか1カ月で未成年を含む1500人以上の市民が拘束され、25人が命を落とした」。
そして、「今も常時1000人近くの政治犯がいる。この状況では怖くて街に出られない。以前は『政府を支持しているか』という世論調査が行われていたが、今は怖くて答えられない。そのため数は把握できないが、拘束を喜んでいる人は多いだろう」と推測する。
高校卒業までベネズエラで過ごし、現在は日本で生活しているカルロスさん(20代)は、「大きなショックを受けている。何年も『なりそうだ』と感じた時はあったが、誰も予想していない日に起きた。4日たったが信じがたく、皆が驚いている」と語る。
ベネズエラ国内で自営業を営むマリアさん(30代)は、拘束を歓迎している。「ベネズエラでは大半が非常に喜んでいる。しかし、政府の脅威があり表に出せない。SNSなどで話したり、ミーティングを行ったりすると、弾圧の対象になってしまう」。
カルロスさんは、インフレを理由にベネズエラを離れた。「スーパーに行くことは毎日が挑戦だった。牛乳1パックが、ある日は200円、翌日は500円、あさっては800円と変わる。ベネズエラの経済は、ドル相場の変化に関係する」。
また、「物が不足し、必死な生活をしているため、泥棒が増えた。銃を持って物を取る。夜に出歩くと確実に悪い目にあうため、私は20時以降、外に出ないようにしていた」と振り返る。
こうした状況が続き、「未来は見えない。大卒者も仕事を失い、タクシードライバーになるなど、必死に外に出ようとしていた。そうした周囲の大人を見て、『ここには未来はない。1日でも早くこの国を出て、自分の未来をつくらなければ』と思った」という。
■ベネズエラは正常に戻れるのか
