■「直列の人生モデル」がもたらすリカバリーの困難さ

家庭と研究の板挟み
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 研究者として一人前になるための博士課程修了時期(20代後半)と、結婚・出産・育児の適齢期が重なることは、多くの日本人女性にとって死活問題だ。通信会社で働きながら2歳児を育てる杉本結花氏は、大学院在学中に第一子を出産した際の苦労をこう明かす。「在学中に子どもを産んで、研究に戻って就活をした。働き出した時は、少ししんどかった。睡眠を削るしか勉強時間とか確保できない。時間が本当にない」。

 杉本氏は、一度のライフイベントがキャリアの致命的なつまずきになりかねない日本の社会構造を「直列の人生モデル」と呼び、危機感を表明した。「(教育分野では)家庭を持つ・家族形成をさせることを並列にした前提があまりない。そういうところを解決していけば、もう少し女性研究者の数が増える」と、塩田氏が述べたアメリカのように、学生であっても家族を持ちながら学べる環境が必要だと訴えた。

 化粧品メーカーに勤務する飯島瑞稀氏は、大学院時代に再生医療を専攻し、現在は皮膚科学のバックグラウンドを活かして研究に励んでいる。飯島氏は、大学の研究室と民間企業における「復職のしやすさ」の違いを指摘した。「(大学の)教授が一人で研究室を持つので、企業と違って替えが利かない。そうなると、女性にはどうしても働きづらさがある。『女子枠』など、女性を補助するような制度がないと、そもそもたどり着けないというか、(大学や企業に)入りづらいような状況になる」。

 「女子枠」については、国立大学での設置が3年で4校から34校に急増しており、賛否が分かれている。ひろゆき氏は「性別や人種の優先枠は良くない。やはり『女の人は理系に向いていない』と思ってしまう」と、偏見を強化する懸念を示した。

 これに対し、塩田氏は「アファーマティブ・アクション(積極的格差修正措置)」の必要性を、強く訴えた。「女性専用枠は現時点では絶対に必要で、アファーマティブ・アクションを外すべきではないと思う。私も最初は、頭で勝負する研究になぜ女性専用枠が必要なのかわからなかったし、その枠に当てはまらない人たちから『逆差別だ』『不公平だ』と声が上がるのは自然なこと」とした上で、「それは私が当時、社会の構造や研究者の評価システム、社会的な無意識のバイアスを理解していなかったから。つい数年前に、ある大学の医学部で、女性が医者になると働かなくなってしまって困るからと、女性の受験者の点数を一律に下げる行為があったのも話題になった。一見、平等に見える制度の中に、無意識の前提やバイアスが入り込むのが現状。やはり社会は、女性に『家庭を守る』など期待する役割は絶対にある。それを積極的に是正するためには(女性専用枠)必要だ」。
(『ABEMA Prime』より)
 

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