
東野圭吾の小説を原作とし、同氏の作品としては初のアニメ映画化となる『クスノキの番人』が、1月30日(金)に公開される。本作は、「その木に祈れば、願いが叶う」と伝えられる不思議なクスノキと、その番人となった青年の物語。理不尽な理由で人生の岐路に立たされた主人公・直井玲斗の声を演じたのは俳優の高橋文哉。実写作品で培ってきた表現力を、声だけでどのように表現したのか。本作への思いをインタビューした。
クスノキとの出会いを自身の転機と重ねて演じた「19歳、仮面ライダーのオーディションに合格した年です」

――まずは、主演のオファーを受けたときのお気持ちを教えてください。
アニメーションの主演?! まさか僕が? という衝撃を受けました。しかも東野圭吾先生の初のアニメ化の作品ということで、すごい大役を任せてもらったという驚きが一番でした。
――原作や台本を読んで、実写ではなくアニメ化することについてはどう思われましたか。
東野先生が本を書きながら「この作品は実写よりもアニメのほうがいい」と思っていたという話を聞きました。実際にクスノキの絵を見たときに、その意味がわかったような気がしまして、アニメーションだからこそ、より幻想的なクスノキの世界観が表現できるのかもしれないと思いました。
――高橋さんが演じた直井玲斗についてはどんな印象を受けましたか。
人間味のある子だと思いました。最初のころの玲斗は、運命をコイントスに任せてしまったり、お金を盗んでしまったりしていました。でも、本当にやりたいわけではなくて、どこか投げやりで、意志の弱いところが人間らしいなと。いろいろなことに流されやすい玲斗が、クスノキとの出会いによって自ら進む道を決められるようになっていきます。玲斗の成長は多くの人が自分の人生と重ねてくれるのではないかと思いましたし、僕も自分の転機と重ねながら演じました。

――高橋さんにとって玲斗のような転機はいつ訪れたのですか。
僕は19歳の時です。19歳は『仮面ライダーゼロワン』のオーディションに合格した年齢です。当時は、まだ俳優になりたいと強く思っていたわけではなく、仕事への覚悟もなくて。いざ仮面ライダーという歴史ある大役をいただいたときに、人生の覚悟を決めないといけないと強く思いました。そこが僕の人生の転機で、玲斗にとってのクスノキとの出会いとリンクしました。
――声だけで演じられたことによって、新しく気づいたこと、得られたことなどはありますか。
今回、監督や声優の先輩からのアドバイスをいただいて、声でしかできない表現が存在することがわかりました。実写だとどうしても表情が先行します。声だけだからこそ難しい部分もあるけれど、声だけだからこそ、伝えたいことを鮮明に伝えられる瞬間もあるなと感じました。
――たとえばどんな部分でしたか。
ブレスで多様な表現ができることを知りました。実写だと「はあ」とため息をつくくらいがマックスですが、アニメだとブレスによって、焦り、怒り、悲しみ、そのほかに数えきれないくらいの種類の感情を表現できます。台詞一つと同じように、息を吸うタイミングも考えて演技しました。
――ブレスにも注目して見てみたいと思います。ほかにもアニメ的な表現として印象に残っているシーンはありますか。
「わ~!」と叫ぶシーンがあって、台本にはいろいろな「あ」が書いてありました。普通の「あ」だけでなく、小さな「ぁ」とか「あに濁点」とか。監督と、たくさんの「あ」が入っている「わ~!」の一言に何を詰め込むかをお話させていただきました。玲斗にとっての覚悟、今までの後悔、いろいろな感情を入れるという話をして、その表現はアニメーションだからこそだと思いました。
――すごい。いろんなアニメ的な技術があるんですね。主演を演じきったあとの一番のお気持ちを教えてください。
僕は一作一作にテーマを決めて、台本の裏表紙に描いています。そのときにもらった言葉やとか、思いついたことを書くだけですが、今回は「楽しく」と書きました。アフレコは僕にとって未知の世界で、まずは楽しくなきゃだめだなって。演じ終えて、本当に楽しかったと感じています。
同世代の俳優に勝てるものはなにか「芝居は勝ち負けではないけど、勝負にこだわっています」
