クマいない九州でシカ大増殖の被害 伝統的狩猟に同行 ハンター決死の駆除【詳細版】
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 東北や北海道を中心にクマによる被害が相次いでいましたが、一方でクマがいない九州では15年の間にシカの数が倍増し、農作物の被害が深刻になっています。シカを囲い込む「巻狩り」に取材班が同行しました。

【画像】シカ巻狩り中に現れた巨大イノシシ 約80kgで今季一番の大きさ

ヒノキ無残 ミカン畑被害

 取材班は、熊本県水俣市の山林へ。猟犬が反応します。そこにいたのは、巨大なシカでした。

 各地で相次いでいたクマによる被害。九州地方には野生のクマは生息していませんが、住民を悩ませている害獣がいます。やって来たのは、7割を山林が占める水俣市です。

熊本県猟友会 高橋重徳会長(74)
「ここもいってしまっているじゃないですか」

真っ白になっていた樹齢60年のヒノキ
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 地元猟友会に案内してもらうと、至る所に皮が剥がされた木がありました。樹齢60年のヒノキは、真っ白になっていました。

「芯がもう腐ってしまっている。(木は)立っているんだけど。倒さないといけないんじゃないですかね。(林業は)金にならないし、労力かけてもどうしようもないし」

顔の高さにある葉を口で引きちぎって食べるシカ
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 犯人は暗視カメラに映る大群。14頭のシカが顔を動かし、餌を探しています。

 別のカメラには決定的な瞬間が映っていました。夜に現れた1頭のシカが、顔の高さにある葉を口で引きちぎって食べています。

 木の左側はすべて食べられ、枝だけに。ミカン畑ではシカの背丈ほどにある葉はすべてなくなり、残っているのは高い所だけ。被害は深刻です。

熊本での二ホンジカの捕獲数
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 熊本での二ホンジカの捕獲数は17年前は年間1万6000頭ほどでしたが、右肩上がりに増加。2023年にはおよそ2倍になっています。

「年々捕獲頭数が増えて、減っているのかなと思うのですが、減らないですもんね」

巨大イノシシも決死の駆除

わなにかかっていた推定4歳のオス
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 通り道になっている場所に「くくりわな」と呼ばれる、シカの足にワイヤーがかかるわなを設置。見に行くと、かかっていたのは、4歳ほどの大人のオス。立派な角が目立ちます。この日は、2頭のシカを駆除しました。

 午前8時、猟友会のメンバー10人と猟犬6頭で山に入ります。

「巻狩り」という伝統的な狩猟
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 巻狩りは、シカを追い立てる役割の勢子(せこ)が猟犬を連れて山に入ります。シカを囲い込み、待ちのハンターが仕留める伝統的な狩猟です。

 10人が配置に着いたことを無線で確認し、勢子がイヌを放ちます。

 その後、番組スタッフの近くにもシカが来ました。

現れたシカ3頭
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 現れたのは3頭のシカ。このシカは仕留めることができず、一目散に逃げていきました。

ハンター
「(脚が撃たれて)ガクンとなったように見えたけど、止まりはしなかったんですよね」

 30分後、2度目の巻狩りを開始。すると、猟犬が猛ダッシュ。けたたましい鳴き声が山に響きます。

仕留めた約80キロの巨大イノシシ
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 急いで犬の鳴き声がする方へ向かうと、シカではなくイノシシが現れました。これ以上カメラが近づくのは危ないと判断。ハンターは1人でイノシシのいるやぶの方へ向かいます。

 仕留めたイノシシはおよそ80キロ、今シーズン一番の大きさです。クマの心配のない九州ですが、付近では農作物の被害が深刻です。大人3人がかりで、軽トラックに積み込みます。

ハンター「人手足りない」

 熊本県猟友会によると、シカやイノシシを1頭駆除すると、国から7000円、市から5000円、合わせて1万2000円の交付金が出ますが…。

高橋会長
「私たちももう全然人手は足りません。若者の掘り起こしをこれから重点的にやっていきたいと思います」

ジビエとして加工しておいしく食べる取り組み
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 駆除したシカやイノシシが運ばれるのは加工場。ジビエとして加工し、おいしく食べる取り組みを行っています。

 この施設では、仕留めてから1時間以内の獲物に限って食肉用に加工しています。地元の飲食店に卸すほか、学校給食や一般向けにネット販売もしています。

ほどよく脂がのった赤身が特徴のシカ肉
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 ほどよく脂がのった赤身が特徴のシカ肉を焼き肉でいただくと、牛肉の赤身をよりさっぱりした感じの味わいです。かめばかむほど肉のうまみが出てきます。

ジビエ工房やまと 岩田陽一施設長
「おいしいお肉だよっていうのを認知してもらうっていうのも、すごく大切にしています」

加工が追いついていない実情
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 捕獲するシカの数が増えていますが、ジビエに加工されるのはごくわずか。加工が追いついていないのが実情です。

「ここは猟師さんに捕獲してもらって成り立っているので、うまくコミュニケーションを取りながら、我々も解体のことだけじゃなくて、一緒に捕獲のこと、課題を考えるっていうのが、今後我々ができることではないかというふうに考えています」

(2026年1月30日放送分より)

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