■日本初の「飛び入学」をした人々の今

千葉大学の飛び入学
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 千葉大学の飛び入学第1号である3人は、現在何をしているのだろうか。松尾圭さんは生活困窮者の相談事業のかたわら、塾で数学講師をしている。梶田晴司さんは現在、大手自動車メーカー関連の研究機関で、自動車素材などの研究開発に携わる。そして佐藤和俊さんは、約10年にわたり任期付き研究員として生活し、現在は運転手(トレーラー→バス)をしている。

 高校3年生を経験しないことで、弊害はなかったのか。松尾さんは「私は行かなくてもよかった。飛び入学で高校を中退しても、同級生や先輩・後輩との関係も悪くなっていない。1期生として後輩を見ても、デメリットがあるという話は聞かなかった」と語る。

 千葉大の飛び入学制度「先進科学プログラム」には、「早くから専門的教育を受けることで独創性豊かな科学者・研究者に」との狙いがある。高2から大学入学可能で、7分野14コース(物理・化学・工学・人間科学など)から選べる。これまで108人が入学(年平均約3.9人)した。また、入学後も手厚いサポート体制があり、本プログラム限定の「特別セミナー」や、マンツーマンに近い少人数指導、1カ月の海外研修(経費は原則大学側負担)を得られる。

 東京大学大学院数理科学研究科の教授で、数学者の河東泰之氏は「飛び級を当たり前に」と訴える。「日本社会や学校は年齢に縛られすぎ」で、「高い意欲と才能がある少年に、一律の中学・高校教育を受けさせるのは無駄」という理由から、「大学受験を年齢無制限にすればいい」と提言する。年齢関係なく大学受験できるようにすべきで、「特別な制度は不要。ただ年齢制限をなくすだけ」としつつ、「既存制度の活用なのでコストはほぼゼロ」だと話す。

 教育課程については「人それぞれ、やりたいようにすればいい。飛び級できても、したくない人もいるだろう。独自に研究するなど、選択肢が多いことがいい」とする。「『飛び級できる人は天才で、大事にしよう』と言っているわけではない。大抵の飛び級経験者は、ちょっと賢い専門家になるだけで、歴史に残るような天才ではない。それでも、自分のペースで好きな時に大学に入れるのがいい仕組みだ」。

 日本の教育制度には「自由が少ない」として、「中国は激烈な受験競争があるが、15歳で北京大学に入る人もいれば、12歳でオックスフォード大学の数学科へ行き、入学後も一番だった人もいる」と語る。「年齢にこだわりすぎている。大学は15歳も、40歳も同じクラスにいて、年齢なんか関係なく、仲良く勉強できる仕組みが良い」。

■日本の教育システムは「年齢型」飛び級・飛び入学に“壁”
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