松岡修造さんのミラノ・コルティナオリンピック特集です。

松岡さん
「スキージャンプは、どれだけ遠くに飛べるかという勝負になります。それだけじゃない。道具のスキー板やスーツにも勝負があります。ジャンプ台に上がる前から勝負は始まっている!」

小林陵侑「ルール多過ぎて…」

2022年の北京オリンピックで、高梨沙羅選手がスーツの規定違反で失格になりました。

それは、スキージャンプの難しさを象徴する出来事でした。失格は隣り合わせ。選手は道具とも戦っています。

この時のチームメート・小林陵侑選手は「スーツでだいぶ決まっちゃう。良いジャンプで勝てるわけじゃない。ルールが多過ぎてカバーしきれない」と話します。

裏側を知るために、道具のエキスパートを訪ねました。

今大会、日本選手が着用するのは、ミズノ製のジャンプスーツ。その製作を担うテクニカルスタッフの尾形優也さんです。

「(Q.スーツの検査項目はどのくらい?)40項目くらい」

スキー板、ブーツから始まり、よく問題となるスーツはサイズ感から通気量まで細かくルールが決まっています。

競技終了までの4つの検査

競技終了までに選手には、いくつもの関門があります。

尾形さん
「大きく分けて、4つのステップがあります」

松岡さん
「そんなにあるんですか。1つ目からお願いします」

尾形さん
「1つ目はいわゆるベーシックメジャーメントというものになりまして、何かというと選手の身長、腕の長さ、足の長さ(股下)あとは足のサイズを登録する作業があります」

シーズン開幕前、国際スキー連盟の専門スタッフが世界中を回って測定。登録したデータは変えることができず、それに合わせてスーツを作りますが、難しくなるのはここからです。

尾形さん
「今度は大体、試合が土曜日にあったとしたら、試合の2~3日前に国際スキー連盟を訪ねてスーツの事前チェックをする。これがテクニカルアプルーバルという」

一体、スーツの何を見るチェックなのか。実際の検査項目にある太ももを例に教えてもらいました。

尾形さん
「足にグッと力を入れて、パンプアップする感じでいいですか」

松岡さん
「パンプアップしたほうがいいんですか?」

尾形さん
「選手もジャンプする時は力が入っていますし、少しでも大きく測られたほうが有利」

尾形さん
「(松岡さんの太ももを測り…)太いっすね、太もも!61センチあります」

松岡さん
「現役の時はものすごい太かったですよ」

尾形さん
「身体のサイズからプラス2センチから4センチまでと決まっているので61センチだったら、63センチから65センチの間にスーツが収まっていないと失格」

ジャンプスーツはゆとりが大きければ、選手は風を捉えやすくなります。究極は、モモンガのようなウィングスーツです。そのため選手はゆとり幅4センチギリギリを攻めていく身体づくりが必要になるのです。

こちらは事前に提出した松岡さんの体形データをもとに作ったジャンプスーツです。

松岡さん
「これ、64センチじゃなかったら失格ですよ」

尾形さん
「はい、そうです」

松岡さん
「65センチまでいいんですよね」

尾形さん
「今、69センチなんです」

松岡さん
「ああ、失格だ」

尾形さん
「これが本当の試合だったら失格です」

松岡さん
「今まで何のために飛んできたのか」

尾形さん
「失格にならないようにチェックして、準備するのが大事」

1ミリでもオーバーしていれば失格となるため、大会前の公式チェックが行われる前には測定と修正を入念に行います。

飛ぶ直前・競技後も検査

関門はまだ終わりません。3つ目は競技直前の股下の測定です。ただ、股下の測定は大会前にも検査される項目。ならば、なぜもう一度調べるのか。

尾形さん
「試合まで時間があるので、その間に改造ができてしまう。改造させないために、飛ぶ直前まで検査するというのがルールになっています」

松岡さん
「終わったらガッツポーズで終わりですね」

尾形さん
「4つ目の検査があります」

競技後、ランダムに行われるジャンプ後コントロール。最後にして最大の関門です。

尾形さん
「ルールにある何の検査か分からない。スーツのサイズや体重などもある。最低限の体重ルールがある」

松岡さん
「原田雅彦さんの失格ですか?」

尾形さん
「トリノオリンピックの時」

2006年のトリノオリンピックで、原田選手は失格となりました。使用したスキー板に対し、体重が200グラム足りませんでした。

長いシーズンを通して選手には厳密な体形維持が求められるのです。

小林選手
「飲まず食わずでおなかが膨らまなかった、多分そういうので1センチでも5ミリでも足りなかったら失格」

松岡さん
「それはすごいストレスですか?」

小林選手
「ストレスなところもあります。飛ぶまでと飛んだ後、色々ありすぎて、でもそれも含めて試合なんで。勝てて、失格にならなくて、ようやく勝者」

松岡修造「チームで戦っている」

徳永有美キャスター
「こんな厳密なところまでルールがあるとは思わなかったです」

板倉朋希アナウンサー
「ルールに対して道具に対して神経をすり減らす競技なんだなと初めて知りました」

松岡さん
「1シーズン、体形維持ですよ。飛んだ後も測定があるんですよ。僕が最もビックリしたのは選手のマインド、受け取り方です。『これも1つの試合』と言われた時によりスキージャンプの見方が大きく変わってきました」

大越健介キャスター
「ここに至るまでの長くて繊細なギリギリの戦いを考えると、あの一瞬にどれだけの思いが込められているか。見る側の我々の気持ちもまた変わりますよね」

松岡さん
「1人で戦っているわけではなくチームで戦っている。ある意味、今回の日本オリンピックチーム全員、自分超え!」

(2026年1月30日放送分より)

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