廃校での合同訓練
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 この壁を打ち破るため、動き出したのは、国の災害対応を研究している東京大学の沼田准教授です。民間の災害救助犬がうまく現場で機能していない現状を知り、旗振り役を買って出ました。

「統一基準を作りたいと思っています。いろんな国で、統一された国家的な基準みたいなものがありますので、我々はそれを参考にして、うまく取り入れながら、日本に合うような基準ができるといいと思っています」(東京大学・沼田准教授、以下同)

 モデルにするのは、災害救助犬先進国のスイスです。沼田准教授が視察に訪れたのは、アルプスの山岳救助で培われたノウハウを基に、世界最高峰の災害救助スキルを誇る団体REDOGです。その訓練は極めて厳格で、数年間にわたるトレーニングと試験を通過しなければ、現場に立つことは許されません。

 目指すのは、日本初となる「災害救助犬統一認定制度」。犬の育成過程から評価基準まで、国が統一した審査体制を作る試みです。

 しかし、基準を統一するだけでは、民間の救助犬の力を最大限に活かすことはできず、受け入れる側の態勢を整えることも不可欠です。

「行政側はそこに指揮命令をする、指示をして動いてもらうだけのマンパワーもないんですよね」

 スイスのREDOGは、24時間体制で出動に備えており、政府や軍とも緊密に連携して、国内外の被災地へ迅速に駆けつけています。

 一方、日本では、どこに何頭の災害救助犬が存在するのか、全体像を把握し、派遣先を差配するというような「指示系統」が行政側に確立されていないのです。

「最終的にはやはり国がしっかりと国としての基準を作って、その修了者の名簿を管理して、適切に配置をするという全体の調整を、国がやるということが理想かなと思います」

 さらに沼田准教授は、国として救助犬の訓練場を整備することや、現場で活動した際の経費の支払い、税制優遇など、国がシステムとして支援する仕組みの必要性も訴えます。

「首都直下地震でも、生き埋めで助けなきゃいけない人が、これは計算上ですけど、7万人を超えてるんですね。南海トラフになると、10万人以上が生き埋めになって、要救助者になると言われてます」

 未曾有の災害。その時、いち早く生存者を特定できる救助犬の存在は不可欠です。善意に頼るボランティア任せの時代から、社会の「インフラ」へ。

 迫りくる大災害の日に、ひとりでも多くの命を救うため、今月半ばには、新制度設立に向けた初めてのシンポジウムが開かれます。(ANNニュース)

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