アメリカ・イスラエルによるイランへの攻撃開始から間もなく1カ月が経過しようとする中、事態は極めて流動的な局面を迎えている。テレビ朝日外報部の大原武蔵記者は、水面下で進む停戦交渉の行方と、指導部への打撃を受けながらも反撃を継続するイラン側の軍事戦略について解説した。
停戦に向けた動きを巡っては、イスラエルメディアがアメリカのトランプ大統領による15項目の停戦条件提示を報じる一方、イラン側のアラグチ外相は「交渉は行われていない」と断言し、双方の主張が食い違っている。しかし、イラン国営メディア「プレスTV」がイラン側の5つの条件を報じるなど、メディアを介した要求の応酬が続いており、事実上の交渉プロセスに入っているとの見方もある。大原氏はこの状況を「お互いの要求がメディアの報道を通じて出てきているというところで、普通の人からすれば、これはもう事実上の交渉が行われていると見えるのではないか」と分析した。
さらに、ロイター通信によれば、パキスタンが仲介役となり、(現地時間)28日にも首都イスラマバードでアメリカのバンス副大統領とイランのガリバフ国会議長による協議が行われるとの情報も浮上している。
緊迫の度合いを高めているのが、トランプ大統領が設定した「ホルムズ海峡の解放」の期限だ。当初48時間としていた警告は5日間に延長されたが、これは長崎県佐世保を出港した米強襲揚陸艦「トリポリ」の現地到着に合わせた軍事的圧力の一環である可能性が指摘されている。トランプ氏はイラン側の反発を背景とした「最後通牒」とも取れる強硬姿勢を崩していない。
一方、イラン側は最高指導者ハメネイ師や革命防衛隊の総司令官ら軍幹部が殺害されるという壊滅的な打撃を受けながらも、断続的な反撃を維持している。この背景にあるのが、2010年前後頃から導入したとされている「モザイク防衛」と呼ばれる分散型戦略である。これは中央集権的な意思決定に頼らず、地方や各部隊が独立して判断を下せる体制であり、トップが殺害される事態を想定して練り上げられたものだ。アラグチ外相もSNSで「分散型のモザイク防衛体制により、我々は戦争をいつ・どのように終結させるか決定できる」と投稿しており、指導部喪失後も組織的な抵抗を継続できる根拠となっている。
出口の見えない戦闘が続く中、イラン国内では「国民や強硬派からの反発を恐れて合意できない」という政治的ジレンマもあるという。大原氏は「イランもなかなか一枚岩になっていないということはもう露呈されている」と語り、意思決定の難しさを説いた。第三国を介した仲介が結実するのか、あるいは軍事的衝突がさらに激化するのか、今週末のパキスタンでの協議が大きなターニングポイントになると見られる。
(ニュース企画/ABEMA)

