
回復する見込みが極めて低くなった時、治療を続けるのか、それともやめるのか…。そうした終末期医療のガイドラインが、この春、大きく変わろうとしています。超高齢化が進む今だからこそ、避けて通れない大事な問題。何が、どのように変わるのでしょうか。(4月11日OA「サタデーステーション)
延命治療を行うか 迫られた決断
都内に住む守田映実さん(48)は、おととし、85歳の母親を心臓の病気で亡くしました。迫られたのは、延命治療をするかどうかの決断です。
母を亡くした守田映実さん(48)
「“私の希望表明書”ということで、回復不能な時に希望することと、してほしくないこと(を記録していた)。これ(「心臓マッサージはしない」という部分ん)は線引っ張ってあるくらい重要なことだったみたいです。母にとって」
事前に示していた意思に基づき、人工呼吸器の装着や心臓マッサージは行わず、最期の場所には、自宅を選択しました。
母を亡くした守田映実さん(48)
「すごく重大な決断になってしまうので、母は私に負わせなかったというところが、すごく大きく感謝しています」
ただ、守田さんの母親のように本人が望む形の最期を迎えられることは、必ずしも当たり前ではありません。
新たな指針 「治療中止も可能」強調
東京ベイ・浦安市川医療センター 則末泰博医師
「ご本人の価値観とは関係なく、命が続く限りは人工栄養と人工呼吸器を続けるという選択肢のみになっていたのが、今までの医療です」
医師の則末さんは、医療現場では、患者が望まない延命治療が続けられてきたと指摘します。背景の1つは、治療を止めることで、法的責任を問われるのではないかという医師側の懸念です。過去には、医師が患者の人工呼吸器を外し、殺人容疑で書類送検されるという事件もありました。
こうした状況を改善するため、いま進められているのが、延命治療に関するガイドラインの見直しです。先月、11年ぶりとなる改訂案が発表されました。
ガイドライン改訂委員会 会田薫子作成委員
「調査対象の4割のドクターが法的な心配があるんだと。何かめんどくさいことが起こったら、医師である自分が法的な責任をとらされるんじゃないかという心配がある」
そこで新たなガイドライン案では、一度始めた延命治療でも途中でやめることができると強調されました。また、患者の希望を基本としたうえで、医師や看護師など、複数の職種のスタッフで方針を話し合い、共同で最終的な意思決定をするなど、方針を決めるプロセスも明記されています。
ガイドライン改訂委員会 伊藤香委員長
「自分が望まない治療であれば、生命維持治療であっても終了できる選択肢があることを知っていただきたい」
“患者が望む最期”実現のカギは
改訂作業にも加わった則末さんは、ガイドラインを先取りする形で、治療の終了という選択も含め、患者が希望する最期に向き合ってきました。カギとなるのは、ガイドラインにも明記された、複数の職種のスタッフで行う会議です。私たちは、ある男性患者の延命治療を続けるか検討する会議の取材が許されました。
医師
「(患者は)現状、意識は戻らないので栄養は基本的に管類からになります」
則末泰博医師
「その状態でどれくらいいけますか?」
医師
「一般的には半年とかで肺炎などを繰り返し、亡くなる可能性が非常に高い」
男性患者は心筋梗塞で搬送され、意識不明の状態が続いていました。
看護師
「本人としては脳梗塞になるなど、今まで病気の背景もあり、いつ自分が意思を発せられなくなるか分からないという懸念もあって、心の準備があったみたい」
則末泰博医師
「この後(家族と)話をして決めようと思います」
病院側は、「治療の継続」と苦痛を取り除きながらの「緩和治療への切り替え」の2つを提案しました。家族は、本人のためにも「緩和治療への切り替え」を決定し、男性はその後、静かに息を引き取りました。
則末さんは、新たなガイドラインについて、治療の中止のためではなく、患者にとっての最善を追い求めるものだと強調します。
東京ベイ・浦安市川医療センター 則末泰博医師
「どこで緩和治療に切り替えるかというのは、患者さんの価値観なんですよね。最終的にはご本人の価値観に添ったことをやったというプロセスがすごく大切だと思う」
新たなガイドラインは、近く正式に決定する見込みです。
母を亡くした守田映実さん(48)
「最期のことを考えるのは悲しいという人もいるかもしれないですが、本人の意思で延命するか自然に亡くなるか決められるなら、それが一番いいのではないかと思います」
患者側に求められることは
高島彩キャスター
「今回は医療従事者向けのガイドラインが改訂されるということですが、私たち患者側に求められることは何でしょうか」
仁科健吾アナウンサー
「取材した社会部の秋本大輔記者は、『どのような医療を受けたいのか元気なうちに周囲に伝えておくことが大切で、文書に残しておくことも有効』だと話していました。例えば、自分の口で食事を楽しみながら生きたいなど、自分が大切にしたい価値観を伝えておけば、治療の方針が明確になります。たとえ意思疎通ができなくなったとしても、家族や医療者の判断の助けになると話していました」
高島彩キャスター
「元気なうち日頃から自分がどのような最期を迎えたいのか、考えておくことを家族と話し合う事も大切ですね」
ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「この選択は二者択一の選択なのかどうか、それと途中で気持ちがまた変わるということもあるということを考えると、慎重なうえにも慎重であってほしいなって気がします。元気なうちとまた病気や症状が進行してから考え方があることはありますから、変えてもいいんだという前提で考えておきたいと思いますね」
