
食料品の消費税を、「2年間ゼロ」を「1%」にする案が急浮上している。一方で消費減税そのものについて、農家や外食業界からは「倒産・廃業が増える」など懸念の声が上がっている。
消費税率ゼロ 実現に課題
まずは、消費税1%案についてみていく。
そもそも食料品の消費税については、酒類や外食などの場合には10%がかかる一方で、野菜や肉、テイクアウト食品などの場合は8%と、こちらの場合は軽減税率となっている。
高市早苗総理はこの軽減税率8%について2年間ゼロにするとしていて、6月末までに社会保障国民会議で中間とりまとめを行い、今年度中にスタートさせたいとしている。
ただ、その実現には大きな壁があるという。それがレジシステムの改修問題だ。1989年の消費税導入以降、課税を前提とするレジシステムが普及している。このシステムは税率を変更することはできてもゼロには設定できないため、新たなシステムをつくる必要があるという。
そのため8日に行われた国民会議の実務者協議で、レジシステムを手掛ける大手メーカーに聞き取りを行ったが、「税率をゼロにするには最長で1年程度かかる」との意見が出た。この場合、高市総理が考える今年度中に間に合わないことになる。
ただ一部の大手メーカーが、「税率1%への変更なら3カ月程度にまで短縮できる」としたことから、消費税を1%にする案が浮上した。
その後、経産省が他のメーカーに追加調査したところ、「税率1%でも5カ月~6カ月程度はかかる」との回答があったという。地方の小売業者の中には独自のシステムを導入しているケースもあり、その場合、システム変更にはさらに時間がかかる可能性もあるという。
通常、税率を変える場合には遅いところに合わせるということで、経産省は全国で調査を進めるとしている。
与党「公約違反」の声も
では「ゼロ」と「1%」で家計への影響はどう変わるのか?
野村総研エグゼクティブエコノミストの木内登英氏が総務省の家計調査をもとに試算したところ、4人家族の食料品の平均支出は1カ月あたり税込み7万5681円だったという。食料品の消費税がゼロになった場合、月額で5606円、年間だと6万7272円、家計の負担が減るという。
では消費税率1%の場合どうなるのか。木内氏によると、年間での負担軽減額は5万8863円になるということで、差は年間1万円近くになるという。
この消費税1%案を巡って与党内でも様々な声が出ている。
自民党のある財務大臣経験者は「1%では公約違反だ」と指摘している。一方、維新の会の梅村聡税調会長は「早く成果を国民に届けるというなら、100点ではないかもしれないが、1%も選択肢としてあり得る」として、税率1%とすることに理解を示している。
ただ、24日の国民会議では経済学者から「物価上昇などにより、減税分ほどは価格が下がらない可能性がある」という意見のほか、「給付付き税額控除のほうが費用対効果が高い」という意見などが上がった。消費減税そのものに慎重な声も出たと、自民党の小野寺五典税調会長が明かしている。
この「給付付き税額控除」というのは、所得税の減税に加え、低所得者などに給付を行う生活支援制度だ。そもそも高市総理も消費減税は「給付付き税額控除」実現までの“つなぎ”の物価高対策という考えを示している。
これについて有識者からは「給付のみの簡易的な制度で始めるべき」との意見が相次ぎ、給付の対象を絞れば「来年からできる」として、与野党から「消費減税も必要ない」との声も上がっているという。
国民会議は28日に会合を開き、減税の課題や論点を整理していくという。
小規模業者への影響は?
消費減税については業者から懸念の声が上がっている。中でも影響を懸念しているのは、年間売上高1000万円以下の免税事業者で、特に影響が大きいのが農林関係者だという。
農林水産省によると、農林業の事業者のうち、免税事業者数は昨年度時点で推計約70万に上り、農林事業者全体の約85%を占めているという。
懸念とは何か。例えば免税事業者の場合、仕入れ先から苗や肥料を仕入れる際、仕入れ代金を支払うが、そこには仕入れ代金に消費税10%が含まれている。
できた野菜などを食品として出荷して売り上げ代金を受け取るが、そこには売り上げ代金に消費税8%が含まれて入ってくる。
ただ、免税事業者の場合、この受け取った消費税を国に納める義務がないため、消費税も含めて農家の利益にできる。しかし食品の消費税が「ゼロ」になると、売り上げに含まれていた消費税8%がゼロになる。一方で苗などは食品ではないため、仕入れにかかる消費税10%は残る。
結果的に消費減税を行うと利益が減り、経営を圧迫するとの声もある。
外食業界「客離れ」を懸念
また、外食業界からは「客離れを招く」という指摘もある。
2月、外食の業界団体「日本フードサービス協会」の久志本京子会長は「食料品の消費税2年間ゼロ」に反対を表明している。
理由として、店内での飲食に10%の消費税がかかる一方、持ち帰りは8%で、この8%がゼロになれば店内飲食と持ち帰りの税負担の差がさらに開き、「飲食店の客離れを招く」と指摘している。
また自民党の小野寺税調会長は国民会議の中で、食料品の消費税ゼロについて「イートインとテイクアウトの確認対応といった負担が生じるなどの指摘があった」と会見で明かしている。
この確認対応とは何か。外食業界では税率の低い「持ち帰り価格」で購入したのに店内で飲食する客が問題になっていて、消費減税によってこうした客への対応など店側の負担が増える懸念があるという。
(2026年4月27日放送分より)
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