
東京・築地に巨大マグロを豪快にさばき、“ツナプリンセス”と呼ばれる女性マグロ解体師がいます。マグロに人生を懸ける彼女の思いを取材しました。
【画像】230キロ超えのマグロを解体する高橋李奈さん(31)
築地唯一のツナプリンセス
長い包丁を操り、豪快に本マグロをさばく女性。通行人も足を止め、食い入るように見つめます。
観光客 韓国から
「とても力強い!」
観光客 カナダから
「“サムライ”みたいだ。まるで“刀”のように見える」
外国人観光客からも称賛の声があがる彼女は、築地の老舗卸売業者「キタニ水産」で働く“マグロ解体師”高橋李奈さん(31)です。
「(Q.なぜマグロ解体師になろうと思ったのか?)かっこよくないですか?でかいマグロを解体する。みんながあまりしてないことをやってみたかった」
豊洲と築地に合わせて500人ほどいると言われるマグロ解体師。その中で女性はわずか2人。築地では、高橋さんただ1人です。
見事な包丁さばきで人々に驚きと笑顔を届ける“ツナプリンセス”。彼女のマグロ解体に懸ける思いに迫りました。
「おはようございます」
「(Q.いつもこんな感じか?)そうですね。雨の日はタクシーで行くけど、電車がない時間に出勤なので、きょうは自転車で行きます。行ってきまーす!」
20分後、築地のお店に到着。毎朝4時に出社します。
新鮮な海の幸を取り扱い、飲食店へ売るとともに店頭販売も行っている「キタニ水産」。高橋さんは開店準備を済ませると、仕入れのため豊洲に向かいます。
「アイス食べながら行く」
毎朝、アイスを食べることがルーティーンのようです。
「やめられなくなっています。このタイミングでいつも食べちゃうんですよね、勝手に。あれ店長のやつ」
仕入れの一番のお目当てはもちろん…。
「マグロの競りは社長がやってくれるので、私たちはしないんです。(私は)それ以外のお魚を今からそろえに行きます」
解体師の道を選んだ理由
仲卸業者などが品質を見極めながら値段を付け合い、最も高い値を付けた人がマグロを落札する競り。その様子を高橋さんは、憧れのまなざしで見つめます。
「指出すスピードが速くて、付いていけない。各社の力を持った人たちがやっている。かっこいい。できるようになれたらいいなと思う」
その後、仕入れた海鮮を車に積み込みます。この日の大物は、230キロを超える福井県産の本マグロです。
築地 キタニ水産 宮下太郎店長
「ざっくり1本で100万~150万ぐらい。軽自動車みたいな」
高橋さん
「かっこいい。大きいとうれしい。きょうは(テンションが)上がります!」
築地にやってきた巨大マグロ。4人がかりで台の上へ。ここからがマグロ解体師・高橋さんの腕の見せどころです!
「おろします!おおかた一人でやるけど押さえてもらったりとか、私パワーがないので、そういう時は補助に入ってもらいます」
162センチの身長よりも長い包丁など3本を手に、マグロと向かい合った高橋さん。
躊躇(ちゅうちょ)なくおろしていきますが「解体師の道」を選んだのは、ふとした興味がきっかけでした。
新潟県十日町市生まれ。自然豊かな環境で、明るく伸び伸びと育った高橋さん。高校卒業後は、デザインの会社に就職し、7年間勤務しました。
ある日、スーパーで若い女性が魚をまるごと買っているのを見かけたことをきっかけに、魚をさばくことに興味を持った高橋さん。いつしか「マグロをさばいてみたい」という夢に変わっていったといいます。
「思いつく自分の中で大きい魚がマグロだったので、マグロかっこいいな(おろすのが)できたらというのがきっかけ。せっかく勉強するんだったら日本一って言われている市場で」
「熱いです!汗だくですね」
豊洲と築地の水産会社に片っ端から電話をかけていきましたが、断られることが多かったといいます。
「『女の子だからやめといたほうがいいよ』とか断られて断られて断られて出てくれたのが、今の店長『太郎さん』。私の話を最後まで聞いてくれて」
当時の様子について、店長は次のように話します。
「『マグロがおろしたいです』って電話をいただいて、僕は年齢とか性別よりも、やる気があるかないかで『やってもいいかな』くらいだとなかなか続かない。ガッツが一番かなと思ったので、彼女にもぜひやってくださいと」
高橋李奈さんの夢
キタニ水産への就職がかない、今年で7年目。いっぱいマグロをおろすためには、いっぱい売らないといけない、そんな考えのもと、力を入れているのが「店頭販売」です。
「私の秘密ノート。いろんな国の『おいしい』や『ありがとう』とか書いていて、仲良くなっている」
高橋さんの明るい接客の効果もあってか、それまで1日3万円ほどだった店頭販売は、最高70万円を売り上げるほどにまで急成長しました。
そんな高橋さんの休日は、友人と女子会を楽しみます。
SNSに投稿するための動画撮影も忘れません。
友人 湯沢沙梨菜さん
「笑顔の接客や人柄が本当にかっこよくて尊敬している」
すべては、多くの人にマグロに興味を持ってもらうため。そして、自分自身が解体師として成長するためです。
「最初のころは骨なんか全く見えなかった。めちゃくちゃ怒られながら育ててもらいました」
店長の厳しい教えも“愛のムチ”。今では息の合った師弟関係です。
200キロ超えの巨大マグロに、ちょっぴり苦戦する場面も。その後もおろし続け、作業開始からおよそ1時間。
「これで(大きな作業は)おしまい。マグロは5枚おろし。上身の腹と背、下身の腹と背、骨の5枚おろし」
見事に巨大マグロをさばききった後は、ひたすら売りまくります。
キタニ水産では、一般の人もマグロ丼などを購入することができます。
高橋さんが思い描く“ある夢”とは、なんなのでしょうか。
「未経験でも女性でも関係なく、やりたい人がやれる業界になったらいい。何者でもなかった私をマグロが唯一無二な存在にしてくれた。女性だから注目してもらえる、最初の足を止めてもらえるっていうところにいる。技術だったり(マグロの)おいしさをたくさんの人に伝えていけるようになるのが目標。(水産業界に)恩返しがしたい」
(2026年4月29日放送分より)
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