
福島県の奥会津に位置する金山町で湧き出る、世界でも珍しい「天然炭酸水」が注目されています。さらに移住者も増えているということです。
【画像】フランシスコ教皇の来日時も採用 天然炭酸の水がテーブルウォーターに
山間の幻想・日本のスイス
およそ5600年前に火山の噴火でできたカルデラ湖は圧巻の光景。町の90%を森林が占める、奥会津に位置する金山町。
新潟・福島豪雨の被害から“11年2カ月ぶり”に全線復旧を果たした「世界で最もロマンチックな鉄道」と絶賛される「JR只見線」。
只見川に佇む「川霧」の中を潜り抜け、風光明媚な光景を映し出す「霧幻峡の渡し」や、古き良き日本の原風景が残る「大志集落」。只見川のほとりに佇む家々と、雄大な山々が織りなす美しい絶景は“日本のスイス”とも呼ばれています。
コンビニは一つもなく、信号機もわずか2基しかない、人口1700人ほどの金山町。
この10年の移住者は“およそ150人”に上り、転入者が転出者を上回る社会増減率は2年連続で県内トップに。
なぜ、これほどまでに人をひきつけるのでしょうか。その魅力の一つが、ただの水ではなく「炭酸」です。金山町は「天然炭酸水」が湧き出ている町なのです。
天然炭酸水求め移住決断
天然炭酸水を求め、多くの人が集まります。
福島県内から
「さわやか、おいしい」
「ちょっと甘さもある」
福島・郡山市から
「あっ、炭酸だ!軟水、おいしいです」
11年前に東京・町田市から移住した老沼潤さん。次々と天然炭酸水をくんでいき、その量はペットボトル(500ミリリットル)25本。重さは“12キロ以上”にも。
老沼さん
「(東京にいた時に)もっと近所に水が湧いている所がいいなと思って、暮らすなら。今まで日本3周していて、一番気に入った場所がここ(金山町)。全国を旅しながら湧き水もいろいろくんでいたんですけど、天然炭酸水は(出会ったのが)ここで初めてだったので、びっくりしました。『こんなのあるんだ!』って」
さまざまな料理に活用
天然炭酸水は、料理にも活用されています。
玉梨とうふ茶屋 佐々木謙一代表取締役
「天然炭酸水で豆腐を作っています。炭酸が中に入っていますから飲み口は良いし、水で作ったのとは(食感が)全然違いますから。なめらか、ぷるぷる…ほんとに、ぷるるんって感じ」
3年前に石垣島から移住
農家民宿・たまがわ屋 眞鍋一郎さん
「炭酸の町ですね」
「これに炭酸水を入れるんですよね。野菜とかのうまみと、お肉がすごく柔らかくなる。水だと意外とそこまでうまみが引き出せない」
5年前に東京から移住 井草葉子さん
「炭酸水を使った金山名物のどら焼きを」
“あま~い香り”が漂う、どら焼き工房。自家製の「つぶ餡(あん)」。生地には天然炭酸水を練り込むことで、“ふわっふわっ”の食感としっとりとした、まろやかな味わいに。
ペースト状にした奥会津金山の特産「赤カボチャ」の餡との相性は抜群です。
明治初期に旧会津藩が販売
3年前に大阪市から移住
ハーベス大塩工場長 宮坂仁士さん
「炭酸が天然というのが、ちょっと信じられないと」
3年前に大阪市から移住した宮坂さん。「天然炭酸の水」を採水し、販売する工場長です。
「せっかく勤めるならば、この炭酸の良さを伝えられるような仕事がいいなと、自然の恵みですから」
全国でも有数の「特別豪雪地帯」に指定されている金山町。染み渡った雪解け水に、天然炭酸が溶け込みます。
さかのぼること“およそ150年前”の明治初期。「地獄沢」と呼ばれ恐れられていた場所から湧出(ゆうしゅつ)するガスが「体にいい薬泉」と、他県から病人が訪れるほどの評判に。
そこで旧会津藩士が天然炭酸水の販売を始め、東京・銀座にも直営店をオープン。各国大使館や当時の宮内省に納品されていたという記録もあり、ヨーロッパにも輸出が始まりました。しかし、険しい山道を馬で運ぶなど、輸送に“予想外の経費”を要し休業を余儀なくされました。
当時、8万4000円の売り上げがあったとされ、明治末期(明治45年)の企業物価指数で試算すると、現在の貨幣価値で“1億円以上”にもなります。
外交などでも活躍
そして“100年以上”の時を経て復活した「天然炭酸の水」。
一般的な天然炭酸水はヨーロッパで採水されていることが多く、そのほとんどが「硬水」ですが、金山町の天然炭酸の水はまろやかで口当たりが軽く、日本人が飲み慣れている「軟水」です。
きりっとした炭酸ながらも、滑らかな舌触りの繊細な「微炭酸」。自然に湧き出ていることから一日の採水量が限られているため、大量生産は難しい世界でも希少な天然炭酸の水です。
宮坂さん
「外国の要人さんが来られた時の“テーブルウォーター”には結構採用されている」
1月に、高市早苗総理大臣がイギリスのスターマー首相と会談した時には、“テーブルウォーター”として採用され、フランシスコ教皇が来日し、安倍元総理と会談した時にも採用されました。
さらには「G20大阪サミット」や“国内外100を超える”ミシュラン店、「日本航空(JAL)」国内線・ファーストクラスの機内食などにも採用されています。
宮坂さん
「自分の作っているものというか、住んでいる所の特徴の一つである炭酸水が社会貢献・地域にも貢献できて町の活性化の一助にもなれているというのはやりがいを感じています」
恩恵は温泉にも
自然の恵みが雇用を生み出し、町の未来を潤している天然炭酸水。
立正大学 名誉教授 安原正也氏
「沼沢火山の活動を支えている、いわゆるマグマ。浅い地下水に、地下深い所から二酸化炭素が湧きあがってきて、それ(地下水)に吹き込んだと。“たまたま”そこに地層の弱線(線状の割れ目)があって、地層の弱い所が地下深い所までつながっていないと地表までは上がってこられない」
天然炭酸水の恩恵は温泉にも。
3年前に東京・国立市から移住した田村愛梨さん(33)。
「こちらが炭酸泉ですね、プチプチしているので」
手には“しゅわしゅわ”とした気泡が。「炭酸泉」とは、お湯1リットルに炭酸ガスが“250ミリグラム以上”溶け込む温泉で、日本の温泉全体のわずか「0.6%」しか存在しません。
ここは“250ミリグラム以上”どころか、4倍の“1000ミリグラム以上”も炭酸ガスが溶け込んでいる、まさに“幻の温泉”。
移住者の定着へ
“日本の原風景”が色濃く残り観光で栄える金山町では人口減少が進む中、“移住者の定着”を図る対策が進められています。
田村さん
「(Q.(温泉施設の)職員?)『かね福』という“福業団体”の企業で、こちらに派遣されて働いている。“きょうだけ職員”みたいな感じですね」
“かね福”とは、人口急減地域の「担い手不足解消」と「移住促進」を目的として設立された事業協同組合。
移住者などを正規職員として雇用し、組合員になった地域19の事業所にマルチワーカーとして人材を派遣する国の制度を活用。
1人あたりの上限「450万円」(令和8年度に引き上げ)が国と町からの補助金で賄われています。
奥会津かねやま福業協同組合 星賢孝事務局長
「派遣先からいただいたお金に、お金(補助金)を足して払っても採算がとれる。派遣先も助かるし労働者も助かる」
“かね福”組合員 金山町温泉保養施設せせらぎ荘
郷田優介支配人
「(繁忙期など)猫の手も借りたい時に、派遣の人が来てくれると施設の運営も円滑に進むので大変助かっている」
「忙しい時期に雇用を確保したい」事業者と、「自身の仕事が軌道に乗るまで収入を得たい」移住者のマッチングで“Win-Win”の関係を作り出しています。
田村さん
「半分の月は自分の起業に充てて、半分は“かね福”で働くという形の人も。(移住したけど)仕事がない。どうやって探していいか分からない形で、そういうところが不安ではあったし、起業するのも考えると町でしっかりした会社というのはありがたいですね」
(2026年5月20日放送分より)
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