
沖縄県辺野古沖で2隻の小型船が転覆し、研修旅行に来ていた高校生を含む2人が死亡した事故。国は、死亡した船長を海上運送法違反の容疑で今週中にも刑事告発する方針を固めました。
【画像】【報ステ解説】今後の捜査の行方は?死亡した船長を刑事告発へ 辺野古転覆
研修旅行の高校生と船長死亡
事故から2カ月。海の一角では現在もアメリカ軍の新たな飛行場の建設が進められています。

事故直前、船に乗っていた同志社国際高校の生徒らが撮影した映像。海原で船が揺られる様子も記録されていました。しかし…。
3月16日午前10時16分
「乗っていた船が大きな波にのまれて、全員が船から落ちた」

辺野古沖で転覆した2隻の小型船は、『不屈』そして『平和丸』と名付けられた新基地建設に反対する“抗議船”でした。乗船していたのは抗議団体『ヘリ基地反対協議会』所属の船員3人と、同志社国際高校の生徒18人です。生徒の目的は、抗議活動ではなく“基地建設の現場を見学し、平和について学ぶため”。この事故で『不屈』の船長・金井創さん(71)と、『平和丸』に乗っていた武石知華さん(17)が亡くなりました。
知華さんは転覆から約1時間後、身に着けていた救命胴衣が船にひっかかった状態で見つかりました。死因は溺死でした。

知華さんの母親
「ともちゃん、ママ来たよ。どこに引っかかっちゃってた?」
事故から2日後、知華さんの母親は娘の洋服と帽子を身に着け、辺野古漁港に。
知華さんの母親
「怖かったね、ともちゃん」
4人家族の次女として生まれた知華さん。遺族は、知華さんは抗議活動をする意図はなかったとしていて、きれいなサンゴ礁を見るのを楽しみにしていたといいます。
事故後、遺族は、あの日からの出来事を記録しています。
遺族のnoteから
「妻が、一緒に船に乗っていた友人の母親から電話を受ける。『乗っていた船が転覆して、知華ちゃんが意識不明で救急車で運ばれたみたい』」
「校長先生含む2名から『武石知華さんが意識不明で病院に運ばれ、先ほど病院から連絡があり、12:29、死亡が確認されました』と伝えられる」
知華さんは飛行機で家路につきました。家族と共に。

知華さんの家族
「おかえり。1人で寂しかったね。一緒に乗ってきてくれて。みんなに会おうね、ともちゃん。友だち会いに来てくれるから。かわいそうに」
運んだのは幼いころからよく利用していたという航空会社でした。
知華さんの家族
「知華喜んでいると思います。ありがとうございました」
遺族が感じた研修旅行の“異質さ”
遺族の記録では、今回の研修旅行自体が“異質だった”と指摘しています。

遺族のnoteから
「知華が『抗議船』に乗ることなど全く知りませんでした。『これに乗っているはずがない。心肺停止で運ばれたのは人違いだろう』とさえ思ったのです」
「定員ぎりぎりの生徒を乗せ、海上保安庁の船が監視する中、抗議活動の場を通り抜ける。それを第三者がどう見るかは、火を見るより明らかです」
死亡した船長に“安全管理を一任”
学校や抗議団体への不信感。事故はなぜ起きたのか。事故後、船の運航を担う『ヘリ基地反対協議会』と『同志社国際高校』がそれぞれ会見を開きました。そこで明らかになったのは“杜撰”とも言える安全管理でした。
事故発生時、波浪注意報が発表される中で出港した2隻の船。金井船長は20年近い経験と操縦技術の持ち主でした。

ヘリ基地反対協議会 浦島悦子共同代表
「海況は悪くなかったと。船長も大丈夫だと出航の判断をしたと思うが」
運航団体は、出航の基準について「船長に一任していた」と説明しました。学校側も…。

同志社国際高校 西田喜久夫校長
「学校としては、最終的に教員と話し合った上で船長の判断にお任せした」
亡くなった金井船長と共に一時期、抗議船に乗っていたという仲宗根さん。事故が起きた現場に疑問を感じていました。

金井船長の知人 仲宗根和成さん
「事故が起きた現場は、通るような場所ではないことは金井さんも分かっていたと思う。なぜそこに近付いたのかも分からない状況」

船長に“丸投げ”されていた安全管理。転覆後、海上保安庁に通報をしたのは、海に投げ出された生徒たちでした。事故後に生徒たちは、出航後の様子についてこう語っています。
生徒らの証言
「どこに向かっているのかは定かではないのですが、海上保安庁と並走していました。かなりのスピードが出ていて、少し怖かったです」
また、平和学習を大きな“アピールポイント”としていた学校側。船については「抗議船とは認識していなかった」との見解を示しています。

同志社国際高校 西田喜久夫校長
「普段“戦争・基地反対”を唱えている方々が乗る船という言い方をしますが、“抗議船”という言葉では生徒にも保護者にも伝えていることはありません」

しかし、これと食い違う記述が学校側の資料に。学校が去年8月に発行した研修旅行のレポートには、亡くなった金井船長のメッセージも掲載されています。語られていたのは、基地建設に抗う、その根底にある思い。メッセージでは、船が『抗議船』であると明言されていました。
死亡した船長が無登録で運航か

事故から2カ月以上。国交省運輸局の業務を担う沖縄総合事務局が、死亡した『不屈』の金井船長を海上運送法違反で今週中にも刑事告発する方針を固めました。海上運送法では有償・無償にかかわらず、他人の求めに応じ、人を乗せて船を運航する場合、国の登録を受ける必要があります。転覆した2隻はどちらも登録されていませんでした。
ヘリ基地反対協議会の構成団体でもある、共産党の田村委員長は今月17日、演説会で謝罪した上で、次のようにコメントしています。

日本共産党 田村智子委員長
「修学旅行の高校生を船に乗せたこと自体が重大な誤り。事故原因の解明、ご遺族への謝罪と補償が行われるよう、私たちも尽力してまいります」

事故後、協議会は一切の抗議活動を自粛し、遺族らに対する直接謝罪の意思を弁護士を通じて伝えているといいます。
亡くなった武石知華さんは沖縄への出発前日、家族とこう話していたそうです。
遺族のnoteから
「沖縄から帰ってきたらインドネシアだね。パパに会えるね」
「ねぇママ、知華ね、春休みは久しぶりに家族四人でディズニー行きたいな」

「家族想いで、家族で出かけるのをいつも楽しみにしてる子でした。家族4人で過ごせる幸せな時間はずっと続くものと思っていました。本当に、どうしてこうなってしまったのか。言葉が続けられません」
今後の捜査の行方は
事故から2カ月。ようやく見えてきた、事故の責任を問う具体的な動き。海難事故に詳しい、元海上保安官・遠山純司氏、松井孝之弁護士に聞きました。

元海上保安官 遠山純司氏
「有償・無償問わず、不特定多数の人を乗せて船を運航する場合、運航管理者を配置したり、安全管理規程を設置するなど、いくつもの安全基準を守った上で、国に事業登録する必要がある。今回2隻が未登録だったということは、安全体制がずさんだった可能性がある。海上運送法違反については、1隻目の船長についてのみ事実関係が判明し、先に告発する方針を固めた可能性もある」
(Q.亡くなった女子生徒が乗っていた2隻目の船長の責任については)
元海上保安官 遠山純司氏
「今後、2隻目の船長に加えて、運航していた団体が告発される可能性がある。さらに、業務上過失致死傷の捜査が重要になる」
海上保安庁では、業務上過失致死傷などの疑いで、船を運航する市民団体の関係先を家宅捜索し、乗っていた生徒17人から事情を聴くなど捜査を進めているということです。

松井孝之弁護士
「業務上過失致死傷に問われる可能性について、ポイントは2つ。1つは『出航の判断が正しかったのか』。もう1つは『救助に向かった判断が妥当だったのか』。この点が今後問われるのでは。波浪注意報が出ていて、人命が失われていて、過失がなかったということは難しいのではないか」

(Q.事故が発生してから2カ月以上が経って動きがあった理由は)
元海上保安官 遠山純司氏
「海上事故の捜査は、陸上で起きた事故に比べて、科学的な検証に時間がかかる。船の転覆に至った『経路』『波・風の強さ』『潮の流れ』『視界の状況』『船の安定性』など、総合的に情報を集めなければならず、困難な捜査になる。何よりも波などの影響で事故当時の現場の保存ができない」

(Q.安全管理の面で学校側が責任を問われる可能性は)
松井孝之弁護士
「学校側が事前に死亡事故発生を予想することは難しく、業務上過失致死傷などの刑事事件に直ちに問われる可能性は低い。ただし、学校は生徒たちの安全を守る立場にあり、危険性の事前調査や安全な団体を選ぶといった“確認の義務”を負っている。その義務を怠ったと判断される可能性はあり、民事上の責任を問われる可能性はあるのでは」
