
中国とロシアは蜜月をアピールしたが、ロシアが対中依存を深める中、力関係の変化も浮き彫りになった。中国が極秘裏に訓練したロシア兵がウクライナ戦線に投入されていたと報じられている。
「新ガスパイプライン」ロシアが力注ぐ
まずは、20日に行われた中ロ首脳会談について見ていく。会談の焦点の一つとなったのがエネルギー問題だ。
中ロ首脳会談で習近平国家主席とプーチン大統領は「世界の多極化と新型国際関係に関する共同声明」で合意した。中ロが主導し、新しい国際秩序を目指していくという。両国は約40の二国間文書に署名、親密さをアピールした。
そしてロシアからは、石油や天然ガスなどのエネルギー企業のトップたちも同行した。中国への輸出拡大に意欲を示していた。
中でもロシアが力を注いでいるのが、新たなガスパイプライン。ロシアからモンゴル経由で中国・北京まで天然ガスを運ぶ「シベリアの力2」の建設計画がある。全長約2600キロ、年間500億立方メートルの天然ガスを供給するという。ロシアとしては西側諸国に代わる供給先として、中国に買ってほしい思惑がある。
では首脳会談で進展はあったのか。タス通信によると、ロシア大統領府のぺスコフ報道官は20日、「ルートと建設方法は合意したが、まだ細かな点が残っている」と話し、価格面などの調整が残っていることを示唆した。
深まる対中依存 中国製品が席巻
中国とロシアの力関係に変化が出てきているようだ。中国への依存を強めるロシアの実情を見ていく。
ロシアでは制裁の影響で経済が低迷する中、存在感を高めているのが中国だ。ロシアの輸入に占める中国製品の割合は、ウクライナ侵攻前は約20%だったが、去年は約40%に倍増している。
ロシアでは中国製品が席巻(せっけん)している状況で、スマートフォン市場では中国メーカーのシェアが70%以上を占め、自動車市場では2021年に9%だった市場シェアが2024年に収益ベースで62%に拡大している。
こうした中、中国とロシアの能力の差が浮き彫りになったのが貿易展示会だ。17日から中国東北部のハルビンで開催されている貿易展示会の写真を見ると、食品などが並ぶロシアのブースに対し、中国のブースにはロボットなどハイテク機器が並んでいる。
ワシントン・ポストによると、ロシアのトルトネフ副首相はロシアと中国の展示を見て「我々には蜂蜜とカニしかなく、友人たち(中国)はドローンやロボットを持っていたのを見て正直言って少しがっかりした」と述べたという。
ロシアは警戒感 全タクシーを国内生産に
中国車が席巻していると伝えたが、中国依存の深まりにロシアは飲み込まれると警戒しているという。
去年1月、ロシア政府は輸入車が対象となる大幅な増税を実施。中国からの自動車輸入の急増を抑制しようとした。
ただ激しいインフレで消費も冷え込み、去年上半期のロシア国内の新車販売台数は前年同期比で26%減になった。つまり中国車を締め出すつもりが、国産の販売も減少してしまった。
去年5月にロシア政府は、今年3月からすべてのタクシーを国内生産にすることを義務づけた。タクシー会社にとっては新たなコストがかかるため、去年7月、モスクワのタクシー運賃が人気ルートで70%値上がりした。
また、通信制限のためインターネットで配車依頼ができず、自家用車による非合法タクシー「ボンビラ」、いわゆる白タクの需要が急増した。モスクワ・タイムズはソ連崩壊後の混乱期である「1990年代に逆戻り」と報じている。
中国がロシア兵を極秘訓練か
中ロ首脳会談で、ウクライナ情勢はどう議論されたのか。
共同声明では、中国はロシアの主権と領土保全の維持を断固として支持。また、双方はウクライナ危機の根本原因を解消し、永続的な平和体制を構築する必要があるとの認識で一致したという。
ウクライナ問題に触れているが、ロシア兵に中国が極秘訓練を行っていたという。
そもそも中国はロシアを経済面で支援する一方で、ウクライナ侵攻に対しては中立の立場を繰り返し主張している。
ただロイター通信によると、去年7月、北京で中ロ高官がドローンの運用訓練を盛り込んだ合意書に署名した。ロシア軍兵士約200人が中国の軍事施設でドローンや電子戦などの訓練を受けることなどが記されていたという。
報告書の中身を見ると、例えばドローンへの迫撃砲発射訓練や、ドローン捕獲用のネット投下訓練、及びフライトシミュレーターでのドローン操縦訓練などがある。ある情報機関は、訓練を受けたロシア兵がウクライナ戦線に派遣された可能性が高いと指摘している。
ロイターの取材に中国外務省は「ウクライナ危機に関して中国は一貫して客観的かつ公平な立場を維持してきたことを国際社会も認めている。関係当事者は意図的に対立をあおったり責任転嫁すべきではない」と述べたという。
ロシア内部文書に「中国は脅威」
その一方で、中国を敵視するロシア内部文書の存在もあるという。
去年ニューヨーク・タイムズが入手したロシア連邦保安庁(FSB)の内部文書によると、FSBのある部門は中国を「敵」と呼び、中国がロシアの安全保障に対する深刻な脅威だと警告したという。
具体的には、西側の兵器や戦術に関する情報を得るために中国がロシア軍の作戦をスパイしていることや、中国側がロシア極東で中国の領有権主張の準備を進めていることなどを指摘している。
FSBはウクライナ侵攻の3日前に、中国を対象とする秘密の防諜(ぼうちょう)プログラムを承認したという。
共同声明で日本を名指し批判
共同声明では、日本を名指しした文言があった。
習主席は共同会見で、「中ロは第2次世界大戦の勝利の成果を否定し、ファシズムと軍国主義を『復活』させようとする挑発行為に反対しなければならない」と語り、ここでは日本について触れなかった。
ただ、共同声明では日本を名指しし、「日本の加速する再軍備政策を平和への脅威とみなしている」「日本が核物質を長期に蓄積していることに深い懸念」があると指摘している。
(2026年5月21日放送分より)
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